ダイエット薬は病院で処方してもらえる:保険が使える4種類とBMIの条件
ダイエット目的の薬(正確には肥満症の治療薬)は、病院で処方してもらえます。2026年6月現在、保険適用があるのはウゴービ・ゼップバウンド・サノレックス・防風通聖散の4種類で、BMIや合併症などの条件を満たすことが前提です。条件を満たさない場合は自由診療となり、リベルサスやマンジャロといった2型糖尿病薬を痩身目的で使う「適応外処方」が広く行われていますが、日本肥満学会などはこうした使い方に注意喚起をしています1。この記事では、病院でもらえるダイエット薬の種類、臨床試験の数値、副作用、費用のしくみ、受診先の選び方を、添付文書と公的資料に基づいて整理します。
病院で処方されるダイエット薬は、保険適用の4種類と適応外(自由診療)に分かれます
国内では成人男性の33.0%、成人女性の22.3%がBMI25以上の「肥満」と報告されており3、肥満症は医療の対象です。病院で使われる薬は「肥満症の治療薬として国が承認したもの(保険適用)」と「別の病気の薬を痩身目的に転用するもの(適応外・自由診療)」にはっきり分かれます。まず全体像を一覧で確認してください。
| 薬 | 分類・使い方 | 保険適用 | 対象になる人 | 臨床試験での体重変化 |
|---|---|---|---|---|
| ウゴービ(セマグルチド) | GLP-1受容体作動薬/週1回の自己注射 | あり(条件付き) | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、BMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上、またはBMI35以上2 | 68週で平均−13.4%(国内試験)3 |
| ゼップバウンド(チルゼパチド) | GIP/GLP-1受容体作動薬/週1回の自己注射 | あり(条件付き) | ウゴービと同じ基準4 | 72週で平均−18.4〜−22.6%(国内試験)4 |
| サノレックス(マジンドール) | 食欲抑制剤/飲み薬 | あり(高度肥満症のみ) | 肥満度+70%以上またはBMI35以上で、食事・運動療法の効果が不十分な人5 | 投与は最長3ヶ月まで5 |
防風通聖散 |
漢方薬/飲み薬 | あり | 腹部に皮下脂肪が多く便秘がちな人の肥満症・便秘など6 | 穏やか(食事・運動の補助) |
リベルサス(セマグルチド錠) |
GLP-1受容体作動薬/飲み薬 | なし(2型糖尿病薬・痩身は適応外) | ダイエット目的の承認はありません1 | 肥満症としての国内承認データなし |
マンジャロ(チルゼパチド) |
GIP/GLP-1受容体作動薬/週1回の自己注射 | なし(2型糖尿病薬・痩身は適応外) | 同上。肥満症で承認されているのは同成分のゼップバウンドのみ4 | 肥満症としての国内承認データなし |
| SGLT2阻害薬(フォシーガなど) | 尿に糖を出す飲み薬 | なし(痩身は適応外) | 2型糖尿病などの治療薬で、痩身目的の承認はありません | 糖尿病患者のメタ解析で平均−1.88kg7 |
結論を先に言うと、条件を満たすならウゴービ・ゼップバウンドの保険診療が第一候補、高度肥満ならサノレックスも選択肢、条件に届かない軽度の肥満なら防風通聖散や市販のアライ、生活習慣の見直しが現実的なラインです。適応外のGLP-1ダイエットは、後述するとおり学会と国民生活センターの両方が注意を呼びかけています110。
ウゴービとゼップバウンドは、臨床試験で13〜22%の体重減少が確認された注射薬です
ウゴービ(一般名セマグルチド)とゼップバウンド(一般名チルゼパチド)は、肥満症の治療薬として国に承認された週1回の自己注射薬です。GLP-1は食事をとると小腸から分泌されるホルモンで、脳の食欲中枢に働いて満腹感を持続させ、胃から腸への食べ物の移動を遅くします。つまり「我慢で食欲を抑える」のではなく「食欲そのものが湧きにくくなる」のがこの系統の特徴です。チルゼパチドはGLP-1に加えてGIPというもう1つのホルモンの受容体にも作用します。
臨床試験の数値は次のとおりです。
| 試験 | 期間 | 薬の群の体重変化率 | プラセボ(偽薬) | 5%以上の減量を達成した割合 |
|---|---|---|---|---|
| ウゴービ2.4mg(日本人対象)3 | 68週 | −13.4% | −1.9% | 82.9%(プラセボ21.0%) |
| ウゴービ2.4mg(海外STEP 1試験)8 | 68週 | −14.9% | −2.4% | − |
| ゼップバウンド10mg/15mg(日本人対象)4 | 72週 | −18.4%/−22.6% | −1.8% | 94.9%/96.9%(プラセボ21.2%) |
| チルゼパチド15mg(海外SURMOUNT-1試験)9 | 72週 | −20.9% | −3.1% | − |
効果の出方は「打ったらすぐ落ちる」型ではありません。ウゴービは0.25mgから始めて4週間ごとに段階的に増やし、維持量の2.4mgに達するまで16週かかります2。そこからも緩やかに減り続け、上の数値は1年強かけた結果です。また、どちらの薬も「食事療法・運動療法を続けても十分な効果が得られない場合」に上乗せする位置づけで、薬だけ使って食生活が変わらなければ本来の対象になりません3。
サノレックスはBMI35以上の高度肥満症だけに保険が使える食欲抑制剤です
サノレックス(一般名マジンドール)は、脳の食欲中枢に直接働いて食欲を抑える飲み薬で、1992年から使われている国内唯一承認の食欲抑制剤です。対象は「肥満度+70%以上またはBMI35以上」の高度肥満症で、あらかじめ食事療法・運動療法を行っても効果が不十分な場合に限られます5。BMIが25〜34の一般的な肥満では保険適用になりません。
- 飲み方:1日1回1錠(0.5mg)を昼食前に。夜に飲むと眠れなくなることがあるため夕方以降は避けます5
- 期間の上限:できる限り短期間とし、最長でも3ヶ月。1ヶ月以内に効果がみられない場合は中止します5
- 主な副作用:口の渇き、便秘、吐き気、不眠、頭痛など5
防風通聖散は肥満症の効能をもつ保険適用の漢方薬です
防風通聖散は18種類の生薬を組み合わせた漢方薬で、医療用の効能・効果に「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人の肥満症・便秘・むくみ」などが含まれています6。一般の内科でも処方されやすく、注射薬に抵抗がある人や、ウゴービの保険基準に届かない人が医師と相談して使うケースが多い薬です。
ただし、GLP-1系のように体重の1〜2割が落ちるタイプの薬ではなく、食事・運動の見直しと組み合わせて使う補助的な位置づけです。「飲むだけで痩せる」ことを期待して選ぶ薬ではありません。
リベルサスやマンジャロのダイエット処方は適応外で、学会は推奨していません
自由診療クリニックの「GLP-1ダイエット」「メディカルダイエット」で出されるリベルサス(飲むセマグルチド)やマンジャロは、国内では2型糖尿病の治療薬として承認されたもので、痩身目的の使用は承認の範囲外(適応外使用)です。日本肥満学会・日本糖尿病学会などが連名で公表したステートメントでは、美容・痩身目的での安易な処方に対して安全性・有効性が確認されていないと明確に警鐘を鳴らしています1。
実害も出ています。国民生活センターには痩身目的のオンライン診療に関する相談が2021年度の49件から2022年度には205件へと約4倍に増え10、「初回診療で数ヶ月分をまとめて処方された」「定期購入の解約条件が不明確だった」といったトラブルが目立つと報告されています。SGLT2阻害薬(フォシーガなど)を痩身に使うクリニックもありますが、糖尿病患者のメタ解析での体重減少は平均1.88kg7と限定的で、こちらも痩身目的は適応外です。
同じ成分でも、ゼップバウンド(肥満症で承認)とマンジャロ(糖尿病で承認)のように「何の病気に対して承認されているか」が異なります。痩せたいのであれば、肥満症として承認された薬を、肥満症を診られる医療機関で使うのが筋道です。
ダイエット薬の副作用は、GLP-1系の吐き気とサノレックスの依存性が代表的です
「何が・どのくらいの確率で・いつ出るか」を薬ごとにまとめます。
| 薬 | よくある副作用 | まれだが重い副作用 | 出やすい時期・経過 |
|---|---|---|---|
| ウゴービ | 吐き気・下痢・便秘・嘔吐。国内試験では2.4mg群の17.6%に悪心の有害事象3 | 急性膵炎、胆石症、糖尿病薬併用時の低血糖2 | 増量の初期に出やすく、多くは一過性8 |
| ゼップバウンド | 吐き気・便秘・食欲減退。国内試験では15mg群の23.4%に悪心の有害事象4 | 急性膵炎、胆のう炎など4 | 同上。増量期に多い4 |
| サノレックス | 口の渇き・便秘・不眠・頭痛5 | 依存性、肺高血圧症5 | 服用中に持続。だから最長3ヶ月の縛りがあります |
防風通聖散 |
下痢・腹痛・発疹 | 偽アルドステロン症、ミオパチー、間質性肺炎、肝機能障害6 | 長期服用で血圧上昇・むくみに注意6 |
| アライ(市販) | 油の漏れ・脂肪便・便意の切迫11 | まれに肝障害などの報告11 | 脂っこい食事のあとに出やすい仕組み上の症状 |
市販で入手できるのはアライだけで、個人輸入のダイエット薬は健康被害の恐れがあります
病院に行かずに入手できる肥満関連の医薬品は、薬局で薬剤師から対面で買う「アライ」(オルリスタット60mg)だけです。アライは食事に含まれる脂肪の一部を分解させず便と一緒に排出させる薬で、対象は「腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上の18歳以上で、3ヶ月以上生活習慣の改善に取り組んでいる人」に限られ、1日3回毎食時に服用します11。同じ成分の高用量版である海外のゼニカル(120mg)は、医療用医薬品としては国内で承認されていません。
ダイエット薬の処方は内科や肥満外来で受けられ、保険なら自己負担は原則3割です
受診先は目的によって変わります。順番に整理します。
- 保険でウゴービ・ゼップバウンドを使いたい:肥満症外来・糖尿病内科のある基幹病院へ。学会の教育研修施設・常勤専門医・管理栄養士という施設要件があるため3、まずかかりつけ医に相談して紹介状をもらう流れが現実的です
- BMI35以上でサノレックスを検討したい:肥満外来または一般内科へ。保険適用の可否はBMIと治療歴で判断されます5
- 防風通聖散を試したい:一般内科・漢方内科で相談できます。体質(便秘がち・腹部の皮下脂肪型)に合うかを診てもらいます6
- 費用のしくみ:保険診療なら薬代・診察料とも自己負担は原則3割です。自由診療は全額自己負担で、同じ成分でも価格はクリニックごとに大きく異なります。オンライン診療で契約する場合は、総額・定期縛り・解約条件を契約前に必ず確認してください10
どの薬を使う場合でも、土台は食事療法と運動療法です。ウゴービもゼップバウンドも、臨床試験はすべて食事・運動指導と併用した条件で行われており34、投与期間に上限がある以上、やめた後に体重を維持できるかは生活習慣にかかっています。
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ダイエット薬と病院についてのよくある質問には、次のように答えられます
標準体重ですが、食欲を抑える薬だけ処方してもらえますか?
肥満症でない人への痩身目的の処方は承認の範囲外で、学会のステートメントでも安全性・有効性が確認されていないとされています1。BMIが基準未満の場合、保険適用の薬の対象にはなりません。
ウゴービは近所のクリニックで保険でもらえますか?
原則として難しいです。保険診療で処方できるのは学会の教育研修施設の認定を受け、常勤の専門医と管理栄養士がいる医療機関に限られます3。まずかかりつけ医や地域の基幹病院に相談してください。
注射は嫌なので飲み薬だけで痩せたいのですが?
保険適用の飲み薬はサノレックス(BMI35以上の高度肥満症のみ)5と防風通聖散など6です。リベルサスは飲み薬ですが2型糖尿病薬であり、痩身目的は適応外です1。薬局で買えるアライ(腹囲基準あり)も選択肢になります11。
薬をやめたらリバウンドしますか?
戻りやすいことが前提とされています。ウゴービの最適使用推進ガイドラインでは、投与中から中止後を見据えた食事・運動療法の継続と、中止後に肥満症が悪化した場合の対応計画が求められています3。薬の期間中に生活習慣を作り変えられるかが分かれ目です。
通販やSNS経由でGLP-1を買うのはだめですか?
避けてください。医療用医薬品の個人輸入品は品質・安全性の保証がなく、健康被害が起きても救済制度の対象外です12。痩身オンライン診療の定期購入トラブルも増加しており10、対面または適切なオンライン診療で医師の診察を受けるのが前提です。
参考文献
1 日本肥満学会ほか「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」(PMDA掲載) リンク
2 ウゴービ皮下注 添付文書(PMDA) リンク
3 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(販売名:ウゴービ皮下注)」(PMDA掲載) リンク
4 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)」 リンク
5 サノレックス錠0.5mg 電子添文(PMDA) リンク
6 ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用) 添付文書(PMDA) リンク
7 Wang X, et al. Predictors of weight reduction effectiveness of SGLT2 inhibitors in diabetes mellitus type 2 patients(PMC) リンク
8 Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity(STEP 1, PubMed) リンク
9 Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity(SURMOUNT-1, PubMed) リンク
10 国民生活センター「痩身目的等のオンライン診療トラブル」 リンク
11 アライ(オルリスタット60mg) 添付文書(PMDA要指導医薬品情報) リンク
12 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」 リンク