痩身

GLP-1ダイエットは食欲と胃の動きを抑えて痩せる仕組み、内服と注射で痩せ方も値段も違う

内海

GLP-1ダイエットとは、もともと糖尿病や肥満症の治療に使われるGLP-1受容体作動薬という注射・内服薬を使い、食欲を抑えて食事量を自然に減らすことで体重を落とす医療ダイエットです。脳の食欲中枢にはたらきかけ、さらに胃の動きをゆっくりにして「あまり食べたくない・すぐ満腹になる」状態をつくります。内服薬(リベルサスなど)と注射薬(マンジャロ・ウゴービなど)があり、減る体重も値段も大きく異なります。一方で、美容目的・ダイエット目的での使用は多くが保険のきかない自由診療かつ適応外(本来の承認目的とは別の使い方)であり、消化器系の副作用も一定の頻度で起こります。この記事では、仕組み・効果の数値・副作用・痩せない人の特徴・費用までを臨床試験のデータに基づいて整理します。

はじめに前提:後述するリベルサス(経口セマグルチド)は日本では「2型糖尿病」の薬として承認されており、肥満症・ダイエットの適応はありません1。健康な人がやせ目的で使う場合は適応外使用・自由診療となり、効果や安全性は自己責任の範囲が広がります。必ず医師の診察を受けてください。

GLP-1は食欲を抑えて胃の動きを遅らせ、血糖に応じてインスリンを出させる仕組みで痩せる

GLP-1(ジーエルピーワン)は、もともと小腸から出る消化管ホルモンの一つです。食事をとると分泌され、体に「食べた」というシグナルを伝えます。GLP-1受容体作動薬は、この働きを薬で強めたものです。痩せにつながる作用は主に3つあります2

  • 食欲を抑える(中枢への作用):脳の視床下部という食欲をコントロールする部分に作用し、空腹感を弱めて満腹感を出しやすくします。これが体重が落ちる最大の理由です。
  • 胃の動きを遅くする(胃排出遅延):胃から腸へ食べ物が送られる速度を遅らせます。食後に満腹感が長く続き、結果として食事量が減ります。
  • 血糖に応じてインスリンを出させる:血糖値が高いときだけ膵臓からのインスリン分泌を促します。血糖が低いときには働きにくいため、単独では低血糖を起こしにくいとされます。

つまりGLP-1ダイエットは「脂肪を直接燃やす薬」ではなく、食欲が落ちて自然に食べる量が減る結果として体重が落ちる、という間接的な仕組みです。ここを理解しておくと、後述する「痩せない人」の理由も納得しやすくなります。

内服薬(リベルサス)と注射薬(マンジャロ・ウゴービ)は成分も痩せる量も違う

GLP-1ダイエットで使われる薬は大きく「飲み薬」と「注射」に分かれます。代表的なものを整理します。

薬剤 成分/タイプ 投与方法 日本での承認
リベルサスリベルサス セマグルチド(内服GLP-1) 1日1回 内服 2型糖尿病のみ(肥満症の適応なし)1
ウゴービ セマグルチド(注射GLP-1) 週1回 皮下注射 肥満症の適応あり(条件あり)3
マンジャロマンジャロ チルゼパチド(GIP/GLP-1) 週1回 皮下注射 2型糖尿病のみ(肥満症の適応なし)4

大きな違いは2つあります。1つ目は飲み薬か注射か。リベルサスは毎日の内服で、注射が苦手な人でも始めやすい反面、起床後すぐ空腹時にコップ半分以下の水で飲み、その後30分は飲食しないという服用ルールがあります1。注射薬は週1回で済みます。2つ目は成分の違い。マンジャロのチルゼパチドはGLP-1に加えてGIPという別のホルモンにも作用する2つの仕組みを持ち、臨床試験では体重減少量が大きい傾向があります(後述)。

体重減少率は薬と量で15〜21%まで差があり、注射のほうが大きい

臨床試験で報告されている体重減少率を見ると、薬と用量で差があることがわかります。いずれも食事・運動指導を併用した試験の数値です。

薬・用量 平均体重減少率 プラセボ(偽薬) 試験
セマグルチド 2.4mg(注射) −14.9% −2.4% STEP 1(68週)5
チルゼパチド 5mg(注射) −15.0% −3.1% SURMOUNT-1(72週)6
チルゼパチド 10mg(注射) −19.5% −3.1% SURMOUNT-1(72週)6
チルゼパチド 15mg(注射) −20.9% −3.1% SURMOUNT-1(72週)6

セマグルチドの大規模試験STEP 1では、68週で平均−14.9%(偽薬は−2.4%)の体重変化が報告され、5%以上減った人は86.4%にのぼりました5。チルゼパチド(マンジャロの成分)のSURMOUNT-1では用量が増えるほど減少率が大きく、15mgで−20.9%に達しています6。これらは肥満症の患者を対象とした最大用量での結果であり、誰でも同じだけ減るわけではない点に注意してください。

効果の実感には数か月かかり、いきなり最大量から始めるわけではない

GLP-1薬は副作用を抑えるため、少ない量から始めて数週間ごとに段階的に増量するのが基本です。リベルサスは3mgから開始し、4週間以上たってから7mgへ増量します1。注射薬も同様に低用量からスタートします。

  • 開始〜数週:食欲が落ちてくるのを感じる人もいますが、体重の変化はまだ小さい段階です。吐き気などの消化器症状が出やすい時期でもあります。
  • 1〜3か月:増量が進み、食事量が減って体重が落ち始めます。臨床試験でも体重減少は16週ごろから明確になります6
  • 6〜12か月以降:前掲の大きな減少率は、いずれも約1年(68〜72週)続けた時点の数値です5,6。短期間で評価する薬ではありません。

副作用は吐き気・下痢などの消化器症状が中心で、開始初期に多い

もっとも多い副作用は消化器症状です。STEP 1(セマグルチド)では、吐き気が44.2%(偽薬17.4%)、下痢が31.5%(偽薬15.9%)に見られました5。発生率の比較を整理します。

症状 セマグルチド群 偽薬群
吐き気(悪心) 44.2% 17.4%
下痢 31.5% 15.9%
消化器症状による中止 4.5% 0.8%

これらの症状は飲み始めや増量の直後に出やすく、多くは数週間から3か月程度で軽くなっていくとされています1。吐き気・便秘・下痢・食欲不振が代表的で、体が薬に慣れるにつれて落ち着くことが多い症状です。ただし全員が軽症で済むわけではなく、消化器症状を理由に薬をやめた人もセマグルチド群で4.5%いました5

重い副作用の可能性:頻度は高くないものの、急性膵炎(強い腹痛・背中の痛み・嘔吐)や胆のうの病気が報告されています。激しい腹痛が続く場合はすぐに使用を中止し受診してください。また低血糖を起こしうるため、他の糖尿病薬との併用時は特に注意が必要です1
使ってはいけない人:妊娠中・妊娠を計画中・授乳中の人、膵炎の既往がある人、重い胃腸の病気がある人などは使用できない・慎重投与とされます。やせ型でダイエットの必要がない人への使用も想定されていません。自己判断で始めず必ず医師に相談してください1

痩せない人は食欲が落ちないか、減った食欲を活かせていないことが多い

GLP-1薬は「食欲を抑えて食事量を減らす」薬なので、その前提が崩れると体重は落ちにくくなります。痩せにくい・痩せないケースには次のような背景が考えられます。

  • 用量がまだ少ない:開始量のままで増量していない段階では、体重への影響は小さいのが普通です。試験の大きな減少率は維持用量まで増やした結果です6
  • 食欲低下を活かせていない:食欲が落ちても、高カロリーの飲み物・間食でカロリーを取り続ければ体重は減りません。薬はあくまで食事管理を後押しする道具です。
  • もともと食べ過ぎが主因でない:むくみ・運動不足・睡眠不足など食事以外の要因が大きい場合、食欲を抑えるだけでは変化が出にくいことがあります。
  • 効果に個人差がある:薬の効き方には個人差があり、同じ用量でも反応は人によって異なります。

なお、やめると食欲が戻り、体重が戻りやすい(リバウンド)点も重要です。維持には食事・運動の生活習慣の立て直しが欠かせません。

ダイエット目的の費用は自由診療で月1〜3万円前後が目安、市販・個人輸入は避ける

美容・ダイエット目的でのGLP-1使用は、肥満症の保険適用条件(後述)を満たさない限り全額自己負担の自由診療になります。費用はクリニックや薬剤・用量で幅がありますが、内服のリベルサスで月1万円台から、注射薬ではそれ以上になることが多いイメージです。価格は医療機関ごとに自由に設定されるため、診察時に確認してください。

ウゴービは日本で肥満症の薬として承認されており、一定の条件(BMIや合併症、栄養指導を含む6か月以上の生活改善で効果不十分など)を満たせば保険診療の対象になります3。一方、リベルサスやマンジャロは肥満症の適応がなく、ダイエット目的は適応外です1,4

個人輸入・市販品は避けてください:GLP-1薬は薬局で市販されておらず、医師の処方が必要な医療用医薬品です。海外通販・個人輸入で入手したものは偽造品・品質不良・成分量の不一致のリスクがあり、健康被害が出ても公的な救済(医薬品副作用被害救済制度)の対象外になります。必ず医療機関で診察を受けて入手してください。
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GLP-1ダイエットによくある質問

健康な人や少し痩せたいだけの人も使えますか。

GLP-1薬はもともと糖尿病や肥満症の治療薬で、軽い体重調整のための薬ではありません。やせ型の人やBMIが低い人への使用は想定されておらず、消化器症状などのリスクだけが残る可能性があります。使用の可否は医師の判断が必要です。

リベルサス(飲み薬)とマンジャロ(注射)はどちらが痩せますか。

臨床試験の数値だけを比べると、チルゼパチド(マンジャロの成分)の高用量で体重減少率が大きい傾向があります6。ただし投与方法・副作用・費用・適応が異なるため、単純にどちらが上とは言えません。生活スタイルと体質に合うものを医師と選ぶのが現実的です。

やめたらリバウンドしますか。

食欲を抑える薬なので、中止すると食欲が戻り体重が戻りやすいことが知られています。薬の期間中に食事量や運動習慣を整えておくことが、やめた後の体重維持につながります。

吐き気がつらいときはどうすればよいですか。

吐き気は開始初期や増量直後に多く、多くは数週間〜数か月で軽くなります1。脂っこい食事や食べ過ぎを避ける、少量ずつ食べるなどで和らぐことがあります。我慢できない、嘔吐が続く、強い腹痛を伴う場合は自己判断で続けず受診してください。

参考文献

1 PMDA 医療用医薬品情報 リベルサス錠(添付文書) リンク
2 上野浩晶ほか「GLP-1受容体作動薬の体重減少効果」糖尿病60巻9号, J-STAGE リンク
3 PMDA 医療用医薬品情報 ウゴービ皮下注(添付文書) リンク
4 PMDA 医療用医薬品情報 マンジャロ皮下注(添付文書) リンク
5 Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity (STEP 1). N Engl J Med. 2021. リンク
6 Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). N Engl J Med. 2022. リンク

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