ニキビ

ピルがニキビに効くのはエストロゲンが皮脂を抑えるから、変化の実感は2〜3か月後

内海

低用量ピル(経口避妊薬・LEP)に含まれるエストロゲンが男性ホルモンの働きを抑え、皮脂の分泌を減らすことで、あごやフェイスラインに繰り返しできる大人ニキビに変化が現れます。海外の臨床試験では炎症性・非炎症性どちらのニキビも有意に減ったと報告されていますが1、日本では「ニキビ治療」としては未承認で、皮膚科学会のガイドラインでも積極的には推奨されていません2。変化の実感までは2〜3か月、はっきり分かるまでは6か月ほどが目安で、まれに静脈血栓症という重い副作用がある点をふまえて使うかどうかを判断します。

ピルがニキビに効くのは、エストロゲンが男性ホルモンを抑えて皮脂を減らすから

ニキビの根っこには、皮脂の過剰な分泌があります。皮脂を増やす引き金になるのが男性ホルモン(テストステロンなどのアンドロゲン)で、女性の体にも一定量つくられています。ピルは、この男性ホルモンの働きを2つのルートで弱めます。

  • SHBGを増やす:ピルのエストロゲンが肝臓に働きかけ、男性ホルモンと結合するたんぱく質「SHBG(性ホルモン結合グロブリン)」を増やします。SHBGがテストステロンを掴まえることで、皮脂腺に作用できる「遊離テストステロン」が減ります1
  • 卵巣からの男性ホルモン産生を抑える:ピルは排卵を止める作用があり、卵巣由来の男性ホルモンそのものの分泌も下がります1

結果として皮脂が減り、毛穴のつまりや炎症が起こりにくくなる、という流れです。特に生理前に悪化する・あごや口まわりに繰り返す・大人になってから増えたタイプのニキビは、ホルモンの変動が関わっていることが多く、ピルの作用が向きやすいと考えられます。

ピルのニキビへの変化は2〜3か月から現れ、はっきり実感するまでは6か月が目安

ピルは塗り薬のように数日で効くものではありません。皮脂腺の入れ替わりやホルモン環境が整うのに時間がかかるため、変化はゆっくり進みます。海外の臨床試験は3〜6か月の服用で評価されているものが多く、効果判定には数か月単位の継続が前提になります1

  • 飲み始め〜1か月:体がホルモンに慣れる時期。むしろ一時的にニキビが目立つこともあります。吐き気や不正出血などの初期副作用が出やすいのもこの時期です。
  • 2〜3か月:新しいニキビが減ってきたと感じ始める人が多い時期です。
  • 6か月前後:変化がはっきりしてくる目安。ここまで続けて手応えがなければ、合っていない可能性も含めて医師と見直します。
飲み始めの悪化で自己中断しないこと:最初の1〜2か月で一時的にニキビや不調が出ても、多くは体が慣れるにつれて落ち着きます。気になる症状は自己判断でやめず、必ず処方した医師に相談してください。

ニキビに使われる主なピルはドロスピレノン配合などの第4世代で、男性ホルモンを抑える力が強い

ピルは含まれる「黄体ホルモン(プロゲスチン)」の種類で世代が分かれ、男性ホルモンを抑える性質(抗アンドロゲン作用)の強さが違います。ニキビへの応用では、抗アンドロゲン作用をもつドロスピレノンなどを含むタイプが注目されてきました。海外の解析では、ジエノゲスト配合のピルで総ニキビ数が大きく減った(プラセボとの差 −15.30、95%信頼区間 −19.98〜−10.62)と報告されています1。ただしピルの種類による効果の差は大きくないとも結論づけられており、「この1種類だけが特別に効く」とは言えません1

分類 含まれる黄体ホルモン例 抗アンドロゲン作用 日本での主な承認用途
第4世代 ドロスピレノン 比較的強い 月経困難症など(ニキビは未承認)
第2世代 レボノルゲストレル 弱め(やや男性ホルモン寄り) 避妊・月経困難症など
第1世代 ノルエチステロン 中間 月経困難症など

いずれも日本では「ニキビ治療薬」としては承認されていません。実際の選択は、ニキビ以外の月経の悩みや体質、血栓リスクなどを含めて医師が判断します。

ピルの副作用は飲み始めの吐き気が中心で、まれだが最も注意すべきは静脈血栓症

多くの人が経験する副作用は、飲み始めの吐き気・頭痛・乳房の張り・不正出血などで、これらは服用を続けるうちに数か月で軽くなることがほとんどです。一方、頻度は低いものの命に関わりうるのが静脈血栓症(足や肺などの血管に血の塊ができる病気)です。発症頻度の目安は次の通りで、ピルを飲むとリスクはやや上がりますが、それでも妊娠中や産後より低い水準です3

状態 静脈血栓症の年間発症数(1万人あたり) 目安
ピルを飲んでいない女性 3〜4人 もともとのリスク
低用量ピル服用中 5〜12人 やや上昇
妊娠中 5〜20人 ピルより高い
産後(産褥期) 40〜65人 最も高い
すぐ受診すべき血栓症のサイン(ACHES = エイクス):強い腹痛(Abdominal)、強い胸の痛み(Chest)、激しい頭痛(Headache)、見えにくさ・舌のもつれ(Eyes/Speech)、ふくらはぎの痛み・むくみ(Severe leg pain)。これらが急に出たら服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。
喫煙者・40歳以上はリスクが上がる:たばこは血栓症リスクを大きく高めます。特に35歳以上で1日15本以上吸う人はピルを使えません。肥満・高血圧・血栓症の既往や家族歴がある人も慎重な判断が必要です3

ピルが向くのは生理前に悪化する大人ニキビ、向かないのは喫煙者や血栓リスクのある人

  • 向きやすい人:生理前にあご・口まわりのニキビが悪化する/外用薬で十分な変化がなかった/同時に生理痛やPMS、避妊の希望もある女性。
  • 向かない・使えない人:35歳以上で1日15本以上の喫煙者、血栓症や心筋梗塞・脳卒中の既往や家族歴、前兆のある片頭痛、重い肝臓病、乳がん・子宮体がんの治療中の人、妊娠中・授乳中の人など3
  • 男性は対象外:ピルは女性ホルモン製剤で、男性のニキビ治療には使いません。

当てはまるかどうかは自己判断できません。必ず問診・必要に応じた検査をしたうえで、医師が処方の可否を決めます。

日本ではニキビ目的のピルは保険適用外の自費で、月経困難症が目的なら保険が使える

日本でピルが保険適用になるのは月経困難症や子宮内膜症の治療を目的とした場合で、ルナベル・フリウェル・ヤーズ・ヤーズフレックス・ジェミーナなどのLEP製剤が該当します。一方、避妊やニキビ・肌荒れだけを目的とする場合は保険適用外(自費)です4。月経困難症の治療として処方されたピルで、副次的にニキビが落ち着くことはあり得ますが、その場合も主目的はあくまで月経困難症の治療です。費用はクリニックや製剤によって幅があるため、料金は各医療機関で確認してください。

ピルと外用薬・他の内服は作用点が違い、組み合わせて使うこともある

ニキビ治療には保険で使える外用薬が複数あり、まずはそちらが基本になります。ピルはホルモンに働く全身的な治療で、塗り薬とは作用の場所が異なるため、競合ではなく組み合わせる選択肢です。

治療 主な作用 向くニキビ 日本での位置づけ
低用量ピル 皮脂分泌を抑える(全身・ホルモン) 生理周期で悪化する大人ニキビ ニキビには未承認・自費
アダパレン(ディフェリン) 毛穴のつまりを取る(外用) 白ニキビ・初期のニキビ 保険適用の外用薬
ベピオ(過酸化ベンゾイル) アクネ菌を減らす・角質を取る(外用) 赤い炎症ニキビ 保険適用の外用薬
トラネキサム酸 炎症や色素沈着の抑制(内服) ニキビ跡の赤み・色素沈着 ニキビ跡向けで自費が多い

どれを使うか、組み合わせるかは、ニキビの種類・重さ・体質によって変わります。まずは外用薬から始め、ホルモンの関与が大きいと判断された場合にピルを検討する、という流れが一般的です。

ピルを個人輸入で入手するのは避けるべきで、医師の診察を受けて処方を受ける

ピルは医療用医薬品で、血栓症など重い副作用のリスクがあるため、本来は問診や必要な確認をしたうえで処方される薬です。

個人輸入・通販を避ける理由:海外通販や個人輸入の製品は、成分量の保証がなく、偽造品や品質の劣化が混じるおそれがあります。血栓リスクのチェックや副作用が出たときのフォローも受けられません。健康被害が出ても国の救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外になります。必ず医療機関で処方を受けてください。
ニキビの治療薬は医師の診察を受けてから
アダパレンゲル 0.1%「YD」15g

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毛穴のつまりを防ぎ、ニキビ(面ぽう)の形成を抑える塗り薬。

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ベピオゲル 2.5% 1本

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抗菌&ピーリング作用で毛穴のつまりを改善するニキビ治療薬。

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アクアチム軟膏 1% 10g

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ピルとニキビについてよくある質問

ピルをやめるとニキビは戻りますか

ホルモンを抑える作用がなくなるため、体質によっては再び皮脂が増えてニキビが戻ることがあります。中止のタイミングや、外用薬への切り替えは医師と相談して決めるとよいでしょう。

市販でニキビ用のピルは買えますか

ピルは医療用医薬品で、市販では入手できません。必ず医療機関での処方が必要です。

ニキビ目的でも保険は使えますか

日本ではニキビや避妊だけを目的とする場合は保険適用外の自費です。月経困難症など保険の対象となる病気の治療として処方される場合は保険が使えます4

飲み始めにニキビが悪化したのですが大丈夫ですか

飲み始めはホルモンの変化で一時的に悪化することがありますが、多くは数か月で落ち着きます。強い症状や長く続く場合は、自己判断でやめずに処方した医師に相談してください。

ニビキにいちばん効くピルはどれですか

研究では種類による差は大きくないとされ、特定の1種類が突出して効くとは言えません1。体質や月経の悩み、血栓リスクをふまえて医師が選びます。

参考文献

1 Arowojolu AO, et al. Combined oral contraceptive pills for treatment of acne. Cochrane Database of Systematic Reviews(経口避妊薬がニキビの炎症性・非炎症性病変を有意に減らすこと、種類間の差・作用機序を報告) PubMed / PMC全文
2 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」CQ38(経口避妊薬・低用量エストロゲン/プロゲスチン配合薬は使用してもよいが推奨はしない、保険適用外・血栓症等の説明が必要) リンク
3 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「OC・LEPガイドライン2020年度版」(静脈血栓塞栓症の発症頻度、禁忌・慎重投与の条件) Mindsガイドラインライブラリ
4 日本産科婦人科学会 ガイドライン・LEP製剤の保険適用に関する情報(月経困難症・子宮内膜症は保険適用、避妊・ニキビ目的は適用外) リンク

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