ニキビ

ニキビのビタミン剤(B2・B6・C)は補助役で、単独で治す力は確認されていません

内海

ニキビで皮膚科を受診すると、塗り薬と一緒にビタミンB2・B6・Cの飲み薬が処方されることがあります。結論からいうと、これらのビタミン剤はニキビ治療の「補助役」です。日本皮膚科学会のガイドラインでの推奨度はC21(行ってもよいが、推奨はしない)で、ビタミン剤単独でニキビを治せるかどうかを確かめた臨床試験は行われていません1。治療の主役はアダパレンや過酸化ベンゾイルなどの塗り薬です1この記事では、ビタミン剤それぞれの役割と限界、副作用、主役の薬との関係を、添付文書とガイドラインの記載に沿って整理します。

ニキビのビタミン剤は日本皮膚科学会ガイドラインで推奨度C2、あくまで補助的な飲み薬です

日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」は、CQ40で「痤瘡(ニキビ)にビタミン薬内服は有効か?」という問いを立て、推奨度C2、つまり「ビタミン薬内服を行ってもよいが、推奨はしない」と結論づけています1。理由はシンプルで、各ビタミン剤がニキビに効くかどうかを確立するための臨床試験がそもそも行われておらず、推奨する十分な根拠がないからです1

一方で、塗り薬のアダパレンや過酸化ベンゾイルは推奨度A(強く推奨する)です1。同じ「ニキビの処方薬」でも、位置づけには大きな差があります。

治療 ガイドライン推奨度1 位置づけ
アダパレン(ディフェリン)外用 A(強く推奨) 主役。毛穴の詰まりを改善する
過酸化ベンゾイル(ベピオ)外用 A(強く推奨) 主役。アクネ菌を殺菌する
外用抗菌薬(アクアチムなど) A(強く推奨) 炎症が強い時期に使う
ビタミン薬の内服 C2(行ってもよいが推奨はしない) 補助。単独使用の根拠はない

ビタミン剤が処方されること自体は誤りではありません。ガイドラインも「行ってもよい」としています。問題になるのは、ビタミン剤だけを飲んでニキビが治るのを待ってしまうケースです。

処方されるのは主にビタミンB2・B6・Cの3種類で、受け持つ役割がそれぞれ違います

ニキビの補助的な内服としては、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCがよく使われます。ガイドラインの記載では、ビタミンB2とB6は皮脂分泌を抑える方向に働くと考えられています1。ビタミンCは、後述するとおりニキビそのものではなく「ニキビ跡の色素沈着」を受け持つ薬です3

ビタミン 代表的な処方薬 体の中での役割 添付文書のニキビ関連の記載
ビタミンB2 リボフラビン酪酸エステル錠、FAD製剤など 皮脂の分泌に関わる1 リボフラビン酪酸エステル錠の効能は口角炎・脂漏性湿疹などで、ニキビの記載はない4
ビタミンB6 ピドキサール錠など 皮脂の分泌やタンパク質の代謝に関わる1 「尋常性痤瘡」の記載がある(B6の欠乏・代謝障害が関与すると推定される場合)2
ビタミンC シナール配合錠 コラーゲン生成などに関わる ニキビ自体の記載はなく、効能は「炎症後の色素沈着」と補給3
(参考)L-システイン ハイチオール アミノ酸の一種で、ビタミンではない ビタミンCと一緒に処方されることがある

ビタミンB6製剤の添付文書にはニキビの記載がありますが、対象は欠乏や代謝障害が関わる場合に限られます

ビタミンB6製剤(ピドキサール錠など)の添付文書には、効能・効果のひとつとして「尋常性痤瘡(ニキビ)」が記載されています2。ただし条件付きです。対象になるのは「ビタミンB6の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合」であり、すべてのニキビに効く薬として承認されているわけではありません2

用量は、成人で1日10〜60mgを1〜3回に分けて飲むのが通常です2。そして添付文書には、「効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない」という注意もはっきり書かれています2。1〜2カ月飲んでも変わらないのに、なんとなく続ける飲み方は添付文書上も想定されていません。

ビタミンB2製剤も似た立ち位置ですが、製剤による違いがあります。たとえばリボフラビン酪酸エステル錠の効能は口角炎・口唇炎・舌炎・脂漏性湿疹などで、ニキビは含まれていません4。「ビタミン剤=ニキビの薬」と一括りにはできない、というのが添付文書ベースの実態です。

漫然と飲み続けないでください:ビタミンB2・B6・C製剤の添付文書には、いずれも「効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない(使用しないこと)」という趣旨の注意があります234。1〜2カ月を目安に、処方した医師と一緒に続けるかどうかを見直してください。

ビタミンC(シナール)が受け持つのはニキビそのものではなく、炎症後の色素沈着です

シナール配合錠(アスコルビン酸+パントテン酸カルシウム)の効能・効果は、「ビタミン類の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給」と「炎症後の色素沈着」の2つです3。ニキビ(尋常性痤瘡)そのものは効能に含まれていません3

つまりシナールは、赤ニキビを減らす薬ではなく、ニキビの炎症が引いたあとに残る茶色っぽい跡(炎症後色素沈着)の回復を助ける目的で出される薬です。「ニキビと一緒に処方されたのに、ニキビの数が減らない」と感じるのは、そもそも受け持ちが違うからです。用量は成人で1回1〜3錠を1日1〜3回が通常です3

ビタミン剤だけでニキビが治りにくいのは、原因の中心が毛穴の詰まりとアクネ菌だからです

ニキビは次の流れで悪化していきます。

  • 皮脂の増加:ホルモンの影響などで皮脂の分泌が増えます。
  • 毛穴の詰まり(面皰・コメド):毛穴の出口の角化がうまくいかなくなり、皮脂が中にたまって白ニキビ・黒ニキビになります。
  • アクネ菌の増殖:たまった皮脂を栄養にしてアクネ菌が増えます。
  • 炎症(赤ニキビ・膿ニキビ):免疫反応が起こり、赤く腫れたり膿を持ったりします。

ビタミンB2・B6が関わるのは最初の「皮脂」の段階のサポートにとどまります1毛穴の詰まりを取り除く働きも、アクネ菌を殺菌する働きもありません。そこを受け持つのが、ガイドラインで推奨度Aとされている塗り薬です1

主役の塗り薬 はたらき 臨床データ 主な副作用
アダパレン(ディフェリン) 毛穴の角化を正常化し、面皰の形成を防ぐ1 12週間の外用で炎症性皮疹が52.3%減少(5つのRCTのメタアナリシス)1 落屑・紅斑・乾燥が80%程度、灼熱感・かゆみが20%程度に出るが、多くは軽微1
過酸化ベンゾイル(ベピオ) 酸化作用でアクネ菌を殺菌。耐性菌が報告されていない1 3カ月のRCTで炎症性皮疹の減少率72.7%(プラセボは41.7%)1 塗った部位の紅斑や皮むけ1
外用抗菌薬(アクアチムなど) アクネ菌の増殖を抑える 炎症性皮疹に推奨度A1 長期連用は耐性菌の観点から避け、炎症がある時期に限って使う1

実際の治療では、こうした塗り薬を軸にして、ビタミン剤は「足し算」として併用される形になります。ビタミン剤を飲んでいるからといって塗り薬を自己判断でやめると、治療の軸そのものが抜けてしまいます。

ビタミン剤の副作用は吐き気や下痢など軽い消化器症状が中心で、重いものはまれです

3種類とも古くから使われている薬で、添付文書に記載されている副作用は消化器症状が中心です。

主な副作用 添付文書上の頻度
リボフラビン酪酸エステル錠(ビタミンB2) 下痢、悪心・嘔吐、胃膨満・腹部膨満、胃不快感、食欲不振 0.1〜5%未満(一部は0.1%未満)4
ピドキサール錠(ビタミンB6) 発疹などの過敏症状、悪心、食欲不振、腹部膨満感 頻度不明2
シナール配合錠(ビタミンC) 胃不快感、悪心・嘔吐、下痢 頻度不明3

症状が出た場合は、いったん服用を止めて処方医に相談すれば対応できる範囲のものがほとんどです。気になる症状が続くときに我慢して飲み続ける必要はありません。

パーキンソン病でレボドパを服用中の方へ:ビタミンB6製剤はレボドパの作用を弱めることがあるため、併用注意とされています2。お薬手帳を提示し、処方医・薬剤師に必ず伝えてください。また、ビタミンCの服用中は尿試験紙法による検査(尿糖、潜血、ビリルビンなど)や便潜血検査で偽陰性が出ることがあります3。健康診断や検査の前には申告しておくと確実です。

ビタミン剤は保険診療で処方される薬で、市販サプリだけで様子を見るより皮膚科の受診が近道です

ここまで挙げたビタミンB2・B6・C製剤は、いずれも医療機関で保険診療として処方される薬です。ニキビの状態を診察したうえで、主役の塗り薬と組み合わせて処方されます。

ドラッグストアにも、ビタミンB2・B6を含む市販薬やL-システイン配合の市販薬、各種サプリメントが並んでいます。これらを試すこと自体は選択肢のひとつですが、注意したいのは次の2点です。

  • 市販で揃うのは補助役だけ:ガイドラインで推奨度Aの主役(アダパレン、過酸化ベンゾイル)は医師の処方が必要な薬で、市販では手に入りません1。補助役だけを飲み続けても、毛穴の詰まりとアクネ菌という原因の中心には届きません。
  • 長引くニキビは「待つ」ほど跡が残りやすい:炎症を繰り返した部位には色素沈着や瘢痕(クレーター)が残ることがあります。ビタミン剤やサプリで数カ月様子を見るより、最初から皮膚科で主役の治療を始めるほうが、結果的に遠回りを避けられます。

なお、海外通販や個人輸入でニキビ治療薬を取り寄せる方法は、品質や偽造品の問題を自分で引き受けることになるためおすすめできません。国内の医療機関で処方を受ければ、診察・副作用への対応まで含めて医師に任せられます。

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ニキビとビタミン剤のよくある疑問には、添付文書とガイドラインの記載から答えられます

市販のビタミン剤(チョコラBBなど)やハイチオールだけでニキビは治りますか?

市販のビタミンB2・B6製剤も、立ち位置は処方されるビタミン剤と同じ「補助役」です。ガイドライン上、ビタミン薬内服は推奨度C2で、単独での有効性を確かめた臨床試験はありません1。赤ニキビが繰り返しできる状態なら、推奨度Aの塗り薬を処方してもらえる皮膚科の受診を優先してください。

ビタミン剤はどのくらいの期間飲み続けていいですか?

添付文書には「効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない」と記載されています234。目安として1〜2カ月で手応えがなければ、続けるかどうかを処方医と相談してください。

ニキビ跡の茶色い色素沈着にはどの薬が向いていますか?

処方薬の中では、シナール配合錠が「炎症後の色素沈着」を効能として持っています3。あわせて、色素沈着を濃くしないために紫外線対策を続けることと、新しいニキビを作らないよう主役の塗り薬で炎症自体を抑えることが土台になります。

ビタミン剤に重い副作用はありますか?

通常の用量では、添付文書に記載された副作用は吐き気や下痢などの消化器症状が中心です234。ビタミンB6製剤では、新生児・乳幼児に大量に用いた場合の横紋筋融解症が重大な副作用として記載されていますが、これは通常のニキビ診療の用量・対象とは異なる状況です2。気になる症状が出たら服用を止めて処方医に相談してください。

ビタミン剤と塗り薬は、どちらかだけでもいいですか?

優先すべきは塗り薬です。アダパレンは12週間で炎症性皮疹を52.3%減らしたというメタアナリシスがあり1、過酸化ベンゾイルは3カ月で72.7%の減少率(プラセボ41.7%)が報告されています1。ビタミン剤は、この主役の治療に足す形で使う薬です。

参考文献

1 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017(CQ40ほか) リンク
2 ピドキサール錠10mg/20mg/30mg 添付文書(PMDA) リンク
3 シナール配合錠/シナール配合顆粒 添付文書(PMDA) リンク
4 リボフラビン酪酸エステル錠20mg「イセイ」添付文書(PMDA) リンク

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