シミ

トレチノインはターンオーバーを促してシミ・小じわを薄くする外用薬、赤みや皮むけは一時的

内海

トレチノインは、ビタミンAの誘導体(レチノイン酸)を有効成分とする外用薬で、肌のターンオーバーを促してシミ・色素沈着・小じわを薄くしていく薬です。多くの方は赤みや皮むけを経験しますが、これは一時的な反応で、海外の臨床データでは刺激のピークは使い始めの1〜2週で、多くは8週ごろまでに落ち着くと報告されています1。シミ治療ではメラニンの生成を抑えるハイドロキノンと併用されることが多く、効果の実感までは数週間〜数か月が目安です。日本国内では美容目的のトレチノインは未承認で自由診療となり、市販はされていません。この記事では作用のしくみ、効果が出る時期、副作用の出方と対処、ハイドロキノンとの併用、使い方、入手方法を、添付文書・学会・論文ベースで整理します。

トレチノインはレチノイン酸受容体に作用して表皮の生まれ変わりを早める薬

トレチノインの有効成分はビタミンA誘導体の「レチノイン酸」です。皮膚の細胞核にあるレチノイン酸受容体(RAR)に結合し、遺伝子の働きを変えることで、表皮の細胞分裂と入れ替わり(ターンオーバー)を整え、加速させます1

シミに対しては、次の2つの作用が組み合わさります。

  • メラニンの排出:角質の入れ替わりが早まることで、表皮にたまったメラニン色素を垢とともに外へ押し出します。
  • メラニン生成の抑制:メラニンを作る酵素チロシナーゼの働きを抑え、新しい色素が作られにくくなります1

さらに、紫外線で増えるコラーゲン分解酵素(MMP-1・MMP-8)の働きを抑え、I型コラーゲンの産生を促すため、小じわや肌のキメにも変化が期待されます1。シミ・色素沈着と、初期の小じわの両方にアプローチできるのがトレチノインの特徴です。

トレチノインの効果が見えるのはシミで数週間〜2か月、小じわは3〜6か月が目安

効果が表れるまでの時間は、目的によって異なります。海外の総説では、おおよそ次のような経過が報告されています1

目的 変化が見えはじめる時期
色素沈着・シミ(併用療法) 約8週前後から
小じわ・キメ・色むら(光老化) 約12〜24週
赤み・皮むけなどの刺激反応 1〜2週がピーク、多くは8週ごろに軽快

シミは比較的早く2か月ほどで変化を感じる方が多い一方、小じわや色むらの改善は半年単位で続けることが前提です。途中で赤みや皮むけが出ても、それ自体は薬が作用しているサインのことが多く、自己判断で急にやめず、医師の指示に沿って続けることが大切です。

トレチノインの副作用は赤み・皮むけ・乾燥・かゆみが中心で、多くは軽度・一時的

最も多い副作用は、塗った部位の赤み(紅斑)・皮むけ・乾燥・かゆみ・ヒリつきです。これらは「レチノイド反応(A反応)」と呼ばれ、海外の臨床試験の総説では、局所反応の多くは軽度〜中等度で一過性とされています1

症状 出やすい時期 経過
赤み・皮むけ・乾燥 使い始め〜1、2週がピーク 多くは8週ごろまでに軽快
ヒリつき・かゆみ 塗布後〜初期 肌が慣れると落ち着く
色素沈着の一時的な濃化 初期に見えることがある 経過とともに変化

皮膚からの吸収はごくわずか(1〜2%程度)とされ、全身性の重い副作用は総説で報告されていません1。とはいえ刺激は個人差が大きく、濃度や塗る量によっても変わります。

妊娠中・妊娠の可能性がある方は使用しない:外用トレチノインは、添付情報上、妊娠中の使用は避けることとされています1。観察研究では奇形リスクの明確な上昇は示されていませんが1、ビタミンA誘導体であり、妊娠中・授乳中・妊娠を計画している方は使用を控え、必ず医師に相談してください。
強い赤みや痛み・水ぶくれが出たら中止して受診:通常の皮むけを超えて、強い痛み・腫れ・びらん・水ぶくれが出た場合は使用を中止し、処方を受けた医療機関に相談してください。トレチノイン使用中は肌が紫外線に敏感になるため、日中の日焼け止めは必須です。

トレチノインとハイドロキノンの併用は「排出」と「抑制」を組み合わせる治療

シミ治療では、トレチノインとハイドロキノンをセットで使う方法が広く行われています。役割が異なる2剤を組み合わせることで、メラニンに両面からアプローチします。

  • トレチノイン:ターンオーバーを促し、たまったメラニンを外へ排出する。
  • ハイドロキノン:メラニンを作るチロシナーゼを抑え、新しい色素の生成を抑える。

一般的には、シミの部分にトレチノインを塗り、その上または周辺にハイドロキノンを重ねる方法がとられますが、塗る範囲・濃度・順番・期間は肌やシミの種類で変わります。海外の総説では、肝斑などの色素疾患で他剤との併用により約8週で変化が見えはじめると報告されています1。具体的な使い方は必ず処方医の指示に従ってください。

トレチノインの使い方は少量を薄く、休薬を挟みながら肌の様子を見るのが基本

濃度や塗り方は処方によって異なりますが、共通する基本的な考え方は次のとおりです。実際の用法は処方医の指示が最優先です。

  • 量は少なめから:米粒〜薄く広げる程度の少量から始め、刺激の様子を見ます。多く塗っても効果が増すわけではなく、刺激だけが強まります。
  • 夜に使うことが多い:紫外線で分解されやすく、日中は肌が敏感になるため、夜に塗る運用が一般的です。
  • 保湿と日焼け止めをセットに:乾燥・皮むけを抑える保湿と、日中の日焼け止めが欠かせません。
  • 休薬期間を挟む:赤み・皮むけが強いときはいったん休み、肌が落ち着いてから再開する「サイクル」を組むことがあります。
目・口・粘膜は避ける:刺激が強いため、目のきわ・小鼻のわき・口唇などの粘膜に近い部位は避けるか、ごく慎重に。塗った後の手はよく洗ってください。

トレチノインは誰に向き、誰が避けるべきか

向き不向きの目安は次のとおりです。実際の適応判断は、診察した医師が行います。

項目 向いている 慎重・避けたい
目的 シミ・色素沈着・初期の小じわ 深いシワ・たるみ単独
肌状態 赤み・皮むけを許容しケアできる 重い敏感肌・炎症・湿疹がある
生活 日焼け止め・保湿を続けられる 紫外線対策ができない
その他 医師の管理下で継続できる 妊娠中・授乳中・妊娠予定

トレチノインは日本では市販されておらず、美容目的は自由診療で入手する

トレチノインは、日本では美容目的のシミ・しわ治療薬として承認されておらず、ドラッグストアなどで市販されていません2。美容目的での使用は、医療機関での自由診療(保険適用外・自費)として、医師の診察のもとで処方されます2

海外通販などを使った個人輸入は、避けるのが安全です。厚生労働省も、個人輸入による医薬品の健康被害のリスクに注意を呼びかけています3

個人輸入を避ける理由:表示濃度と中身が一致しない・成分の品質が保証されない・偽造品が混ざるといったリスクがあり、健康被害が起きても公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外になります3。濃度や使い方を自己判断で誤ると、強い炎症や色素沈着の悪化につながることもあります。医師の診察を受けて入手・使用することが、安全面でも結果の面でも現実的です。
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トレチノインのよくある質問

トレチノインは市販で買えますか。

日本では美容目的のトレチノインは承認されておらず、市販されていません2。美容皮膚科などの医療機関で、自由診療として医師の処方を受けて入手します。

赤みや皮むけが出たら使うのをやめるべきですか。

軽度の赤み・皮むけは作用に伴う一般的な反応で、多くは1〜2週がピークとなり、続けるうちに落ち着いていくと報告されています1。ただし強い痛み・腫れ・水ぶくれが出た場合は中止し、処方医に相談してください。

効果はどのくらいで実感できますか。

シミ・色素沈着では併用療法で約8週前後から、小じわや色むらでは約12〜24週かけて変化が見えてくるのが目安です1。個人差があります。

ハイドロキノンと必ず併用しないといけませんか。

必須ではありませんが、シミ治療では「排出」のトレチノインと「生成抑制」のハイドロキノンを組み合わせることが多い方法です。併用の有無や濃度は、シミの種類や肌に合わせて医師が判断します。

使用中に日焼け止めは必要ですか。

必要です。トレチノイン使用中は肌が紫外線に敏感になり、紫外線はシミの悪化要因でもあるため、日中の日焼け止めは欠かせません。

参考文献

1 Tan SR, et al. An Updated Review of Topical Tretinoin in Dermatology: From Acne and Photoaging to Skin Cancer. J Clin Med. 2025(作用機序・効果発現時期・副作用の発現時期と経過・妊娠時の注意・経皮吸収率) リンク
2 Topical tretinoin for treating photoaging: A systematic review of randomized controlled trials. PMC(光老化・色素に対する有効性と臨床試験の整理) リンク
3 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ(個人輸入)」(個人輸入による健康被害のリスク・救済制度の対象外) リンク

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