シミ

シミの飲み薬はトラネキサム酸・シナール・ハイチオールの3種が中心、向くのは肝斑と色素沈着

内海

シミに使われる飲み薬は、トラネキサム酸(トランサミン)・ビタミンC(シナール)・L-システイン(ハイチオール)の3種類が中心で、最も活躍するのは「肝斑」と「炎症後の色素沈着」です。海外の二重盲検ランダム化比較試験では、トラネキサム酸250mgを1日2回・3ヶ月飲んだグループで肝斑の色素スコア(mMASI)が約49%低下し、日焼け止めだけのグループ(約18%低下)を大きく上回りました1。一方で、輪郭のはっきりした老人性色素斑やそばかすは飲み薬だけでは薄くなりにくく、レーザーなどの施術が主役になります。この記事では、3種類の飲み薬の働き・効果のデータ・副作用の確率・塗り薬との使い分けを、添付文書と臨床試験の数値ベースでお伝えします。

シミの飲み薬はトラネキサム酸・シナール・ハイチオールの3種類が中心です

皮膚科や美容皮膚科でシミに対して処方される飲み薬は、ほとんどがこの3種類の組み合わせです。それぞれ働きかけるポイントが違うため、単独ではなく「トラネキサム酸+シナール+ハイチオール」のセットで処方されることが多くあります。

項目 トラネキサム酸
(トランサミン)
シナール
(ビタミンC配合錠)
ハイチオール
(L-システイン)
主な成分 トラネキサム酸 アスコルビン酸200mg+パントテン酸カルシウム3mg(1錠中)3 L-システイン80mg(1錠中)4
シミへの働き メラニンを作れという指令(プラスミン)をブロック メラニン生成を抑え、できたメラニンを淡色化 肌の代謝を助け、メラニンの排出をサポート
得意なシミ 肝斑 炎症後の色素沈着 補助役として併用
添付文書上の効能 湿疹・蕁麻疹等の皮膚症状、出血傾向など。肝斑への処方は医師の判断による適応外使用2 「炎症後の色素沈着」が効能に明記3 湿疹・蕁麻疹・尋常性ざ瘡など。処方薬の効能に「しみ」は含まれない4
飲み方の目安 1日750〜2,000mgを3〜4回に分割2 1回1〜3錠を1日1〜3回3 1回80mgを1日2〜3回4

意外に思われるかもしれませんが、医療用のトランサミンの効能・効果に「肝斑」「しみ」という言葉はありません2。もともとは止血や湿疹・じんましんの薬で、肝斑への内服は国内外の臨床データを根拠にした適応外処方(自由診療)として広く行われています。一方、市販薬ではトラネキサム酸を主成分とし「しみ(肝斑に限る)」の効能で承認された第1類医薬品(トランシーノIIなど)が存在し、こちらは薬剤師のいる店舗で購入できます。

飲み薬が向くのは肝斑と炎症後色素沈着で、老人性色素斑は施術が主役です

「シミ」とひとくくりに呼ばれるものには複数の種類があり、飲み薬が効くかどうかはシミの種類でほぼ決まります。自分のシミがどれに当たるかを最初に見極めることが、お金と時間を無駄にしないいちばんの近道です。

シミの種類 見た目の特徴 飲み薬の向き不向き
肝斑 頬骨のあたりに左右対称、輪郭がぼんやりした薄茶色のもや。30〜50代の女性に多い ◎ トラネキサム酸内服が治療の中心。レーザーの強い刺激でかえって濃くなる場合があるとされ、飲み薬の存在感が大きい
炎症後色素沈着 ニキビ・虫刺され・傷の跡が茶色く残ったもの。年齢を問わない ◎ シナールの効能に明記3。時間とともに薄くなる性質があり、内服と紫外線対策で経過を後押しする
そばかす(雀卵斑) 鼻から頬に散らばる小さな点状のシミ。遺伝の影響が強く幼少期から現れる △ レーザーや光治療が主役。飲み薬は補助的な位置づけ
老人性色素斑 輪郭がくっきりした丸い茶色のシミ。長年の紫外線蓄積が原因 × 飲み薬だけでは薄くなりにくい。レーザー治療やハイドロキノン等の外用が中心

厄介なのは、肝斑と老人性色素斑が混在しているケースが珍しくないことです。自己判断で市販薬を飲み続けるより、一度皮膚科でシミの種類を診断してもらったほうが、結果的に早く確実です。

トラネキサム酸はシミを作る指令をブロックし、臨床試験では3ヶ月で色素スコアが約49%下がりました

肝斑では、紫外線やこすれなどの刺激で「プラスミン」という物質が増え、これが色素細胞(メラノサイト)に「メラニンを作れ」という指令を出し続けている状態と考えられています。トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑える薬で、指令の大元を断つことでメラニンの過剰生産にブレーキをかけます。シミを漂白するのではなく「蛇口を閉める」イメージです。

効果のデータは複数の臨床試験で確認されています。

  • プラセボ対照の二重盲検試験:中等症〜重症の肝斑患者44名(解析39名)にトラネキサム酸250mgを1日2回・3ヶ月投与したところ、色素スコア(mMASI)が約49%低下。日焼け止めのみのプラセボ群は約18%の低下でした1
  • 260名の比較試験:通常の外用治療にトラネキサム酸内服を加えた群では、8週時点ですでに統計的に有意な改善がみられ、12週でMASIスコアが11.08から7.84まで低下しました5
  • 注射との比較:内服群(250mg×2回/日)はMASIが57.5%改善し、患部への注射群(43.5%改善)を上回ったという報告もあります6

実感までの期間の目安は、上記の試験デザインからわかるとおり2〜3ヶ月です。1〜2週間で判断せず、最低でも2ヶ月は続けてから経過を評価するのが標準的な使い方です。逆に、3ヶ月飲んでもまったく変化がない場合は、シミの種類の診断からやり直す合図でもあります。

シナールとハイチオールはメラニンの生成と排出に働く補助役で、組み合わせて処方されます

シナール(ビタミンC+パントテン酸)は、メラニンが作られる過程を抑えるとともに、すでにできた黒色メラニンを淡色化する方向に働きます。添付文書の効能にも「炎症後の色素沈着」が明記されており3、ニキビ跡の茶色い跡などには保険診療でも処方される薬です。

ハイチオール(L-システイン)は、体内でSH酵素を活性化して皮膚の代謝を正常化する薬です4。肌のターンオーバーを介してメラニンの排出を後押しする位置づけで、処方薬としての効能は湿疹・じんましん・ニキビ(尋常性ざ瘡)などであり、「しみ」は含まれていません4。「しみ・そばかす」の効能をうたえるのは市販薬のハイチオールC系列のほうです。

つまりこの2つは、単独でシミを消す薬というより、トラネキサム酸が生産を止め、シナールが淡色化し、ハイチオールが排出を促すという分業の中で意味を持つ薬です。クリニックで「美白セット」のように3種が同時に処方されるのはこのためです。

漫然と飲み続けない:シナールの添付文書には「効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない」と明記されています3。2〜3ヶ月単位で写真を撮って比較し、変化がなければ治療方針を見直してください。

シミの飲み薬の副作用はまれで、トラネキサム酸では食欲不振や吐き気が0.1〜1%未満です

3種類とも長く使われてきた薬で、添付文書上の副作用頻度はいずれも低めです。何が・どのくらいの確率で起こるかを整理します。

主な副作用 頻度
トラネキサム酸2 食欲不振・悪心・嘔吐・下痢・胸やけ、そう痒感・発疹 0.1〜1%未満
トラネキサム酸2 眠気 0.1%未満
シナール3 胃不快感・悪心・嘔吐・下痢 頻度不明(まれ)
ハイチオール4 悪心 0.1〜5%未満
ハイチオール4 下痢・口渇・軽度の腹痛 0.1%未満

多くは飲み始めの胃腸症状で、服用をやめれば治まるレベルのものです。ただし、トラネキサム酸には体質・状況によって注意が必要なケースがあります。

トラネキサム酸と血栓のリスク:トラネキサム酸は血を固まりやすい方向に働く性質があり、添付文書ではトロンビン投与中の患者への使用が禁忌、血栓のある人や術後で寝たきりの人には「血栓を安定化するおそれがある」として注意が求められています2。脳梗塞・心筋梗塞・血栓症の既往がある人、低用量ピルを服用中の人は、処方前に必ず医師に伝えてください。また人工透析を受けている人では、まれに痙攣の報告があります2

飲み薬と塗り薬は守備範囲が違い、併用することで補い合います

飲み薬は体の内側から「顔全体・両頬の広い範囲」にじわっと効かせるのが得意で、塗り薬や施術は「この1個のシミ」をピンポイントで狙うのが得意です。どちらが上というものではなく、シミの種類で主役が入れ替わります。

手段 向くシミ 特徴 注意点
飲み薬(トラネキサム酸など) 肝斑、広範囲のくすみ、炎症後色素沈着 顔全体に作用。施術と併用しやすい 実感まで2〜3ヶ月1。老人性色素斑には力不足
ハイドロキノン(外用) 老人性色素斑、炎症後色素沈着、肝斑の外用併用 メラニン生成酵素を直接抑える塗り薬 刺激・かぶれが出ることがあり、塗布部位の経過観察が必要
レーザー・光治療 老人性色素斑、そばかす 輪郭のはっきりしたシミを短期間で除去しやすい 肝斑には刺激で悪化する場合があり、適応の見極めが必要

実際の診療では「肝斑にトラネキサム酸内服+老人性色素斑にレーザー」「内服で全体を整えつつハイドロキノンをポイント使い」のように組み合わせるのが一般的です。そして種類を問わず共通する大前提が紫外線対策です。前述のプラセボ対照試験でも、全員に日焼け止めを使わせたうえで内服の上乗せ効果を測っています1。日焼け止めなしの飲み薬は、蛇口を閉めずに床を拭くようなものです。

シミの飲み薬は医療機関での処方が基本で、個人輸入はリスクの大きい入手方法です

入手ルートは大きく3つあります。確実性の高い順に並べると次のとおりです。

  • 皮膚科・美容皮膚科での処方:シミの種類を診断したうえで、適した組み合わせを処方してもらえます。肝斑目的のトラネキサム酸は適応外使用のため自由診療となることが多く、費用はクリニックごとに異なります。オンライン診療で処方するクリニックも増えています
  • 市販薬(OTC):トラネキサム酸配合で「しみ(肝斑に限る)」の効能を持つ第1類医薬品や、L-システイン主体の「しみ・そばかす」向け製品があります。第1類は薬剤師からの説明を受けて購入する区分です。服用期間に上限が設けられているため、パッケージの記載を守ってください
  • 海外からの個人輸入:価格の安さで選ばれがちですが、おすすめできません(理由は下記)
個人輸入を避けるべき理由:厚生労働省は、個人輸入される医薬品について、品質・有効性・安全性が日本の基準で確認されていないこと、偽造品が混入しうること、そして健康被害が起きても公的な医薬品副作用被害救済制度の対象外となることを注意喚起しています7。トラネキサム酸は血栓リスクの確認が必要な薬であり、診察なしで飲み続けるのは割に合わない賭けです。
シミ・肝斑の治療薬は医師の診察を受けてから
トラネキサム酸錠 250mg 90錠

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肝斑の改善による美白効果ほか、炎症による痛みや腫れを抑える内服薬。

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ハイチオール錠80 90錠

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L-システインの働きでシミ・そばかす、肌荒れ、二日酔いなどを改善。

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シナール配合錠 90錠

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シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、コラーゲン生成を助けるビタミン剤。

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シミの飲み薬の質問では、服用期間・市販薬との違い・中止後の再発がよく聞かれます

どのくらいの期間飲めばいいですか?

臨床試験の多くは8〜12週間(2〜3ヶ月)で効果を判定しています15。まず2〜3ヶ月を1クールとして経過を写真で比較し、続けるかどうかを医師と相談するのが標準的です。効果がないまま漫然と続けるのは避けてください3

市販のトランシーノやハイチオールCで代用できますか?

肝斑であれば、トラネキサム酸配合の第1類医薬品は選択肢になります。ただし市販薬には服用期間の上限があり、自分のシミが本当に肝斑かどうかの診断はできません。2ヶ月飲んで変化がなければ、種類違い(老人性色素斑など)を疑って受診したほうが早道です。

飲むのをやめたらシミは戻りますか?

肝斑は紫外線・摩擦・ホルモンバランスの影響を受け続ける性質があるため、中止後に再び濃くなることがあります。やめたあとも日焼け止めと「こすらないスキンケア」を続けることが、戻りにくくする現実的な方法です。

男性が飲んでも問題ありませんか?

トラネキサム酸・シナール・ハイチオールに男性禁忌はありません。肝斑は女性に多いものの男性にも生じ、治療の考え方は同じです。血栓リスクの確認が必要な点も同様です。

低用量ピルと一緒に飲めますか?

ピル自体に血栓リスクがあるため、血を固まりやすくする方向に働くトラネキサム酸との併用は慎重な判断が必要です2。自己判断で併用せず、処方時に必ずピル服用中であることを伝えてください。

参考文献

1 Del Rosario E, et al. Randomized, placebo-controlled, double-blind study of oral tranexamic acid in the treatment of moderate-to-severe melasma. J Am Acad Dermatol. 2018. PubMed
2 トランサミン錠250mg/500mg・カプセル・散 添付文書(PMDA) PMDA 医薬品情報
3 シナール配合錠・配合顆粒 添付文書(PMDA) PMDA 医薬品情報
4 ハイチオール錠40・80・散 添付文書(PMDA) PMDA 医薬品情報
5 Karn D, et al. Oral tranexamic acid for the treatment of melasma. Kathmandu Univ Med J. 2012. PubMed
6 Sharma R, et al. A randomized, open-label, comparative study of oral tranexamic acid and tranexamic acid microinjections in patients with melasma. Clin Exp Dermatol. 2017. PubMed
7 厚生労働省 医薬品等の個人輸入について 厚生労働省

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