シミ

肝斑の治し方はトラネキサム酸の内服が中心。3か月で約49%薄くなったデータと、レーザーで悪化させない注意点

内海

肝斑の治し方は、トラネキサム酸の内服を中心に、徹底した紫外線対策と「こすらないスキンケア」を組み合わせるのが基本です。プラセボ(偽薬)と比較した臨床試験では、トラネキサム酸を3か月飲んだグループで肝斑の重症度スコアが約49%低下しました(偽薬グループは18%)3。一方で、シミ取りで一般的な高出力のレーザーは、肝斑に当てるとかえって濃くなることが知られています1。この記事では、肝斑とほかのシミの見分け方、薬の選び方と副作用、やってはいけないことを、添付文書と学会の診療指針に基づいて整理します。

肝斑の治し方は「遮光+トラネキサム酸内服」が基本で、レーザーは最初の選択肢ではありません

日本皮膚科学会などがまとめた美容医療診療指針では、肝斑への対処は遮光(紫外線を避けること)が必須で、この指導が最も重要とされています1。そのうえで、メラニンの生成を抑える内服薬・外用薬を使い、それでも変化が乏しい場合に初めてレーザーや光治療(IPL)が検討される、という順番です1

  • ステップ1:日焼け止め・日傘・帽子で紫外線を浴びない。洗顔やマッサージで顔をこすらない
  • ステップ2:トラネキサム酸の内服を軸に、ビタミンCなどを併用する
  • ステップ3:ハイドロキノンなどの外用薬を組み合わせる
  • ステップ4:内服・外用で不十分な場合に限り、低出力のレーザーや光治療を医師と相談する

「シミ=レーザーで取る」というイメージで美容クリニックに駆け込む前に、まず自分のシミが本当に肝斑かどうかを確かめることが、遠回りに見えて一番の近道です。

肝斑は両頬に左右対称に広がる、輪郭のぼやけたシミで、ほかのシミとは形で見分けられます

肝斑は、主に両頬に左右対称にあらわれる後天性の色素異常症です1。輪郭がくっきりしたシミとは違い、頬骨のあたりにモヤッと面状に広がり、境界がはっきりしないのが特徴です。どのシミかによってレーザーの向き不向きが正反対になるため、見分けがそのまま治し方を左右します。

シミの種類 形・輪郭 できる場所・特徴 レーザー治療
肝斑 輪郭がぼやけた面状。モヤッと広がる 両頬・頬骨に左右対称。額や口の周りに出ることもある 単独で当てると悪化のおそれ1
老人性色素斑 輪郭がくっきりした円形〜楕円形 頬やこめかみなど日光の当たる場所に単発〜数個 適応になりやすい1
そばかす(雀卵斑) 点状の細かい斑がパラパラと散らばる 鼻から頬の中心に左右対称。子どもの頃からあることが多い 適応になりやすい
炎症後色素沈着 ニキビ・傷・かぶれの跡と同じ形 炎症が起きた場所そのまま。時間とともに薄くなる傾向 基本は外用と経過観察

やっかいなのは、肝斑がほかのシミと合併しやすいことです。診療指針でも、肝斑は両側性遅発性太田母斑(ADM)やリール黒皮症、炎症後色素沈着との鑑別が難しく、老人性色素斑との合併もみられると指摘されています1。ADMはレーザーが治療の主役になる一方、肝斑はレーザーで悪化しうるという真逆の関係なので、自己判断で決めず、皮膚科でダーモスコピーなどを使った診断を受けてください。

肝斑は紫外線と女性ホルモンの変動、肌への摩擦が重なってできます

診療指針では、肝斑の主な悪化因子として紫外線曝露と女性ホルモンが挙げられており、特に紫外線が発症要因として重要とされています1。妊娠や経口避妊薬(ピル)の使用をきっかけに目立ちはじめる人が多いのはこのためです。また、毛細血管拡張の合併例や、皮膚のバリア機能が低下した例の報告もあり1、クレンジングやマッサージで顔をゴシゴシこする刺激も悪化要因と考えられています。

肝斑は「光老化を基盤として、良くなったり悪くなったりを繰り返す難治性の色素異常症」と位置づけられています1。つまり一度薄くなっても、紫外線や摩擦の習慣が変わらなければぶり返しやすい、ということです。薬だけに頼らず生活側の原因を断つことが、治し方の半分を占めます。

トラネキサム酸はメラニンを作る指令をブロックする薬で、3か月の内服で重症度が約49%下がったデータがあります

トラネキサム酸はもともと止血や炎症を抑える目的で使われてきた薬です。肌の中では、紫外線などの刺激で発生する「プラスミン」という物質が、メラニンを作る細胞(メラノサイト)に活性化の指令を送ります。トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑えることで、メラニンを作る指令そのものをブロックすると考えられています。すでに沈着したメラニンを漂白するのではなく、新しく作られるのを止めて、肌の生まれ変わりとともに薄くしていくイメージです。

根拠となるデータを見てみます。中等症〜重症の肝斑の方44名を対象にしたランダム化比較試験では、トラネキサム酸250mgを1日2回、3か月内服したグループで肝斑の重症度スコア(mMASI)が49%低下しました。偽薬グループの低下は18%でした3。また、内服・外用・注射などの方法を比較したメタ解析(複数の臨床試験をまとめた分析)では、内服がスコアの低下幅が大きいという結果が報告されています4。診療指針でも、メタ解析によりトラネキサム酸が肝斑の治療に有効であると報告されている、と記載されています1

クリニックでは、トラネキサム酸に加えてビタミンC(シナール)やL-システイン(ハイチオール)を組み合わせて処方されることが一般的です。

位置づけ 働き
トラネキサム酸 治療の中心 プラスミンを抑え、メラニンを作る指令をブロックする
シナール(ビタミンC配合錠) 併用の補助 メラニンの生成を抑える方向に働くビタミンCを補う
ハイチオール(L-システイン) 併用の補助 肌の代謝を助け、メラニンの排出を後押しする
ハイドロキノン 外用の軸 塗り薬。メラニンを作る酵素の働きを抑える

実感までの期間は、臨床試験の評価時点が参考になります。上記の試験は3か月(12週)時点で効果を判定しており3、市販のトラネキサム酸製剤(後述)も「8週間」を一つの区切りとしています5飲み始めて数週間で劇的に消えるものではなく、2〜3か月単位で写真を撮って比べるのが現実的な期待値です。

トラネキサム酸の副作用はまれで、主に食欲不振や吐き気などの胃腸症状です

医療用トラネキサム酸(トランサミン錠)の添付文書では、副作用はいずれも頻度1%未満とされています2。内訳は次のとおりです。

頻度 症状 備考
0.1〜1%未満 食欲不振、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、胸やけ 胃腸の症状が中心2
0.1〜1%未満 そう痒感(かゆみ)、発疹 過敏症状2
0.1%未満 眠気 2
頻度不明 痙攣(重大な副作用) 人工透析を受けている患者で報告2

肝斑を対象にした前述の臨床試験でも、重篤な有害事象は両グループとも報告されていません3。メタ解析では、胃腸の不快感のほか月経に関する変化が有害事象として挙げられています4。多くの人にとって飲みやすい薬ですが、体質によって注意が必要なケースがあります。

血栓のリスクがある人は必ず医師に伝えてください:トラネキサム酸は血を固まりやすい状態に保つ方向に働くため、添付文書では「トロンビンを投与中の患者」への投与は禁忌です。また、脳血栓・心筋梗塞・血栓性静脈炎などの血栓のある患者、血栓症があらわれるおそれのある患者には注意が必要とされています2。血栓症の既往がある方、経口避妊薬(ピル)を服用中の方は、自己判断で飲み始めず、処方時に必ず申告してください。

ハイドロキノン外用は研究データの蓄積が多い塗り薬で、内服や遮光と組み合わせて使います

塗り薬では、ハイドロキノンが軸になります。診療指針が引用する大規模なレビュー(113論文・6,897症例)では、肝斑全般の治療として最も有効で十分に検討されてきたのはハイドロキノン単独外用と、ハイドロキノンを含む混合クリーム(トリプルクリーム)外用であり、ピーリングやレーザー・IPLの有効性はこれらと同等かやや劣り、副作用はより多いと結論づけられています1

ハイドロキノンはメラニンを作る酵素(チロシナーゼ)の働きを抑える塗り薬で、「指令を止める内服のトラネキサム酸」と「現場の生産ラインを止める外用のハイドロキノン」という補完関係になります。ただし刺激性があり、赤みやかぶれが出ると、その炎症自体が色素沈着を招くことがあります。濃度や塗り方は処方した医師の指示に従い、異常を感じたら中断して相談してください。

高濃度品の個人輸入は避けてください:海外製の高濃度ハイドロキノンやトレチノインを個人輸入で入手すると、刺激による炎症からかえって色素沈着を悪化させても、品質の保証も医師のフォローもありません。外用薬は診察のうえで処方を受けるのが結局いちばん早道です。

レーザー治療は肝斑をかえって濃くすることがあり、単独では行いません

ここが肝斑の治し方で一番の落とし穴です。老人性色素斑などのシミ取りに広く使われる高出力(高フルエンス)のQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーは、強い炎症を引き起こして肝斑を悪化させることが知られています1

では「肝斑対応」をうたう低出力のレーザー(いわゆるレーザートーニング)ならよいのかというと、こちらも無条件ではありません。診療指針が引用する報告では、低フルエンスのQスイッチNd:YAGレーザーをやや高めの出力で週1回・5回照射したところ、22例中3例に小さな脱色素斑(白抜け)が生じたとして注意が促されています1。レーザー療法は短期間で面積と重症度を下げられる利点がある一方、肝斑を根治させる治療ではなく再燃が多いため長期間の使用は推奨されない、というのが複数のメタ解析を踏まえた評価です1

レーザーは「最後の選択肢」です:診療指針では、レーザーやIPLは遮光・美白剤(内服や外用)に次いで用いられるものと位置づけられています1。内服・外用を十分に行ったうえで残った部分に、肝斑の治療経験が豊富な医師が低出力の照射を検討する、という順番が原則です。診断をせずに「シミ取り放題」のような形でいきなり照射を受けるのは避けてください。

肝斑でやってはいけないのは「こする」「いきなりレーザー」「日焼け対策をやめる」の3つです

薬を飲んでいても、悪化要因が残っていれば追いつきません。次の3つは今日からやめられます。

  • こする:クレンジングのゴシゴシ洗い、フェイスマッサージ、硬いタオルでの拭き取りは摩擦刺激になります。洗顔は泡で触れる程度に、化粧水は押さえるようにつけます
  • いきなりレーザー:肝斑かどうかの診断を経ずに高出力レーザーを当てると、悪化のリスクがあります1。照射歴は次の治療の判断材料になるので、受けた場合は医師に伝えてください
  • 日焼け対策をやめる:紫外線は最大の悪化因子です1。曇りの日や冬も日焼け止めを続け、塗り直しをサボらないことが、薬と同じくらい効きます

肝斑のトラネキサム酸治療は自由診療が基本で、市販薬という選択肢もあります

医療用のトランサミン錠の効能・効果に「しみ・肝斑」は含まれていません2。そのため、肝斑目的の処方は適応外使用となり、美容皮膚科などでの自由診療(保険適用外)として扱われるのが一般的です。料金はクリニックごとに異なるので、診察料・薬代の総額で確認してください。

市販薬では、トラネキサム酸を1日750mg配合した第1類医薬品(トランシーノIIなど)が「しみ(肝斑に限る)」の効能で販売されています。添付文書では8週間を超えて服用しないこととされ、血栓症の既往がある人などは服用前に薬剤師への相談が必要です5。手軽さは魅力ですが、前述のとおり肝斑はADMや老人性色素斑と紛らわしく、診断が外れていると8週間が無駄になります。初めての治療なら、一度は皮膚科で診断を受けてから始めることをおすすめします。

シミ・肝斑の治療薬は医師の診察を受けてから
トラネキサム酸錠 250mg 90錠

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肝斑の改善による美白効果ほか、炎症による痛みや腫れを抑える内服薬。

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シナール配合錠 90錠

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シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、コラーゲン生成を助けるビタミン剤。

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グルタチオン錠 100mg 90錠

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抗酸化作用で肌の酸化(くすみ)を予防する美白サポート成分。

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肝斑の治し方でよくある質問

肝斑は放っておけば自然に治りますか?

診療指針では、肝斑は光老化を基盤として寛解と増悪を繰り返す難治性の色素異常症とされています1。紫外線や摩擦などの悪化因子が続く限り、自然に消えるのを待つのは現実的ではありません。早めに遮光と内服を始めるほうが、薄い段階で食い止められます。

トラネキサム酸はどのくらいで実感できますか?

臨床試験では3か月(12週)の内服で重症度スコアが約49%低下しています3。数週間で判断せず、2〜3か月続けてから写真で比較するのが目安です。市販薬は8週間を超えて服用しない決まりになっているため5、8週時点で手応えがなければ皮膚科で診断から見直してください。

飲むのをやめたら元に戻りますか?

前述の臨床試験では、3か月の内服終了からさらに3か月後の時点で、スコアの低下幅が49%から26%に縮みました(偽薬グループは19%)3。つまり一部は戻るものの、偽薬との差は維持されていました。中止後も遮光と摩擦回避を続けることが、戻りを抑える鍵になります。再開や継続の判断は医師と相談してください。

男性にも肝斑はできますか?

できます。女性ホルモンの変動が悪化因子の一つであるため女性に多いものの1、紫外線や摩擦は性別を問いません。男性の場合は髭剃りによる摩擦が刺激になっている例もあるため、シェービングの方法も見直す価値があります。

ピルを飲んでいてもトラネキサム酸を使えますか?

必ず処方医に申告したうえで判断してもらってください。トラネキサム酸の添付文書では、血栓のある患者や血栓症のおそれのある患者への投与に注意が必要とされています2。経口避妊薬の使用状況・血栓症の既往・喫煙歴などを伝え、リスクを評価してもらうことが前提です。

参考文献

1 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」 リンク
2 トランサミン錠250mg/500mg 添付文書(PMDA) リンク
3 Del Rosario E, et al. Randomized, placebo-controlled, double-blind study of oral tranexamic acid in the treatment of moderate-to-severe melasma. J Am Acad Dermatol. 2018(PubMed) リンク
4 Tranexamic acid as a therapeutic option for melasma management: meta-analysis and systematic review of randomized controlled trials. J Dermatolog Treat. 2024(PubMed) リンク
5 トランシーノII 添付文書(PMDA 一般用医薬品情報) リンク

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