シミ

老人性色素斑は輪郭のはっきりした茶色いシミで、除去はレーザー治療が第一選択です

内海

老人性色素斑(日光黒子)は、長年浴び続けた紫外線の影響で顔や手の甲にできる、輪郭のはっきりした茶色いシミです。できてしまった老人性色素斑を除去する方法の第一選択はQスイッチレーザーなどのレーザー治療で、日本皮膚科学会などがまとめた美容医療診療指針でも推奨度1(治療を希望する患者には強く推奨)とされています1。ハイドロキノンやトレチノインなどの塗り薬は補助的な位置づけで、市販の美白化粧品には「できたシミを消す」効能は認められていません5この記事では、老人性色素斑の見分け方、できる仕組み、治療の選択肢と限界を、診療指針と論文のデータに基づいて説明します。

老人性色素斑は紫外線の蓄積でできる、輪郭のはっきりした茶色いシミです

老人性色素斑は、後天性のメラニン色素沈着症(いわゆるシミ)の中で最も多くみられるタイプです1。「老人性」という名前がついていますが、高齢者だけのものではなく、主に40歳以上で、紫外線がよく当たる顔・手の甲・前腕に加齢とともに出現します1。色は褐色からやや黒色で、大きさは直径数mmから1cmを超えるものまであります1

  • 形:円形〜楕円形で、周囲の肌との境目が比較的はっきりしています。
  • 色:均一な茶色〜濃い褐色。時間とともに少しずつ濃く、大きくなる傾向があります。
  • 場所:頬骨のあたり、こめかみ、手の甲、前腕など、日光がよく当たる場所に偏ってできます。
  • 自覚症状:かゆみや痛みはありません。盛り上がってきた場合は、脂漏性角化症(イボ状の良性腫瘍)へ移行していることがあります1

老人性色素斑は「輪郭」「部位」「きっかけ」で肝斑やそばかすと見分けられます

シミの治療は種類によって正反対になることがあるため、まず見分けが重要です。特に肝斑は、老人性色素斑に有効な高出力のQスイッチレーザーを当てると強い炎症が起きてかえって悪化することが知られています1。代表的な4種類の違いを表にまとめます。

シミの種類 見た目 できやすい部位 年齢・きっかけ 治療の方向性
老人性色素斑 輪郭がはっきりした円形〜楕円形の茶色い斑 頬・こめかみ・手の甲・前腕 主に40歳以上1。紫外線の蓄積 レーザー・光治療が第一選択1
肝斑 輪郭がぼやけたモヤッとした薄茶色。左右対称 両頬・額・口まわり 30〜50代女性。女性ホルモン・紫外線1 高出力レーザーで悪化リスク1。トラネキサム酸内服が有効と報告1
そばかす(雀卵斑) 数mm以下の小さな茶色い点が多発 鼻・頬を中心に散らばる 幼少期〜思春期に目立つ。体質(遺伝)の関与 レーザー・光治療の対象だが再発しやすい
炎症後色素沈着 ニキビ・虫刺され・やけどなどの痕に一致した茶色み 炎症が起きた場所ならどこでも 年齢を問わない。炎症のあと まず待つ。数か月〜年単位で薄くなることが多い6
自己判断で済ませてはいけないシミ:老人性色素斑の鑑別には、悪性黒子(メラノーマの一型)や日光角化症などの皮膚がん・前がん病変も含まれます。診療指針でも、疑わしい場合はレーザー照射の前にダーモスコピー(拡大鏡検査)や生検での精査を考慮すべきとされています1。急に濃くなった・形がいびつ・にじむように広がる・出血するといった変化があるシミは、美容治療の前に皮膚科で診断を受けてください。

老人性色素斑の正体は、紫外線ダメージで表皮がメラニンを溜め込み続ける変化です

肌の表面(表皮)には、紫外線から細胞を守るためにメラニン色素を作る工場(メラノサイト)があります。通常、作られたメラニンは肌の生まれ変わり(ターンオーバー)とともに垢として排出され、日焼けはやがて元に戻ります。

ところが長年紫外線を浴び続けた部位では、表皮の細胞に老化による異常が起こり、メラニンを作る指令が出続ける・作られたメラニンがうまく排出されないという状態が固定化します。その結果、特定の場所にだけメラニンが溜まりっぱなしになったものが老人性色素斑です1。日焼けのように「待てば消える」状態ではなく、メラニンを過剰に溜め込む性質そのものが定着しているため、自然に消えることは基本的に期待できません。だからこそ、溜まったメラニンを物理的に壊して排出させるレーザー治療が治療の中心になります。

老人性色素斑の治療はQスイッチレーザーが第一選択で、診療指針の推奨度は1です

日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会がまとめた美容医療診療指針(令和3年度改訂版)では、老人性色素斑へのレーザー・光治療(IPL)は「推奨度1:治療を希望する患者には強く推奨する」と位置づけられています1。レーザーは、メラニンだけに吸収される波長の光をナノ秒(10億分の1秒)単位の一瞬だけ照射し、周囲の正常な皮膚を傷つけずにメラニンの塊を選択的に破壊する仕組みです1

有効性のデータとしては、532nmのQスイッチNd:YAGレーザー(KTP)を37例の日光黒子に1回照射した多施設試験で、高フルエンス(高出力)で治療した病変の60%において75%を超える色素除去が達成されたと報告されています1。また、低出力のQスイッチNd:YAGレーザーを6〜10回繰り返し照射した症例集積では、12人中7人(58.3%)が著明改善〜ほぼ完全改善、3人(25.0%)が中等度改善でした1。濃くはっきりした斑ほどレーザーが反応しやすく、1回で大きく薄くなるケースが多い一方、薄い色調の斑は反応が弱く複数回の照射や併用治療が検討されます1

治療法 除去力 回数の目安 主なリスク・弱点
Qスイッチレーザー(ルビー・アレキサンドライト・Nd:YAG) 高い。濃い斑は1回照射で大きく反応することが多い1 1回〜数回 炎症後色素沈着(後述)。照射後1〜2週間は患部の保護が必要
ピコ秒レーザー ナノ秒レーザーと同等の色素除去が報告され、患者満足度で上回ったとの比較もある1 1回〜数回 炎症後色素沈着。取り扱い施設が限られる
IPL(光治療) 一定の有効性が報告されている1。1回あたりの反応は穏やか 複数回が前提 Qスイッチレーザーとの比較で炎症後色素沈着が少なかったと報告1。ダウンタイムが短い
冷凍凝固(液体窒素) 有効だが、レーザーとの比較研究ではNd:YAGレーザーが最良で液体窒素は最下位だった1 1回〜数回 色素沈着・色抜け(白く残る)が起きることがある
外用薬(ハイドロキノン・トレチノイン) 補助的。薄くなるまで月単位4 数か月の連日塗布 刺激性皮膚炎、赤み。自己流の長期使用はかぶれの原因に

費用については、老人性色素斑の除去を目的としたレーザー治療は整容目的のため原則として保険適用外(自由診療)です。シミの大きさや個数ごとの料金設定が一般的で、金額は医療機関によって異なります。なお、太田母斑など一部の色素性疾患のレーザー治療は保険収載されており1、診断によって扱いが変わるため、まず診察で「どの種類のシミか」を確定させることが結果的に近道です。

肝斑が混ざっている場合の注意:老人性色素斑と肝斑は同じ顔に合併することが珍しくありません1。肝斑部分に高出力のQスイッチレーザーが当たると、強い炎症で肝斑が悪化することが知られています1。頬に左右対称のモヤッとした薄茶色がある人は、照射範囲の設計ができる医師の診察を受けてから治療を始めてください。

レーザー後の炎症後色素沈着は日本人でおおむね1〜3割に起こり、時間とともに薄くなります

レーザー治療で最も頻度の高い合併症が、照射後しばらくしてから患部が再び茶色くなる「炎症後色素沈着(PIH)」です。日本人を含むアジア人は欧米人より起こりやすく、アジア人の老人性色素斑を対象にした比較研究では、Qスイッチルビーレーザーを強い設定で照射した群で33.3%、弱い設定で7.5%、Nd:YAGレーザーでは強い設定で23.2%、弱い設定で8.5%に発生したと報告されています2。532nmのQスイッチNd:YAGレーザーを使った多施設調査でも、発生率は全体で20.3%でした3

重要なのは、炎症後色素沈着は「失敗」ではなく、一定確率で起こる一時的な反応だということです。表皮レベルの色素沈着は、治療しなくても数か月から、長い場合は年単位で薄くなっていくとされています6。標準的な経過は次のとおりです。

  • 照射直後:患部が白っぽくなり、その後ヒリつきと赤みが出ます。
  • 〜1・2週間:薄いかさぶたになり、自然に剥がれます。この間はテープや軟膏で保護し、こすらないことが大切です。
  • 2週間〜1か月:いったんきれいに見えた部位が再び茶色くなることがあります(炎症後色素沈着の始まり)。ここで慌てて追加照射するのは逆効果です。
  • 1〜6か月:遮光を続けながら経過を見ると、色素沈着は徐々に薄くなります。医師の判断でハイドロキノン外用などを併用することもあります。
  • その後:色が残る場合や薄い斑の再治療は、肌が落ち着いてから検討します。

ハイドロキノンやトレチノインなどの塗り薬は補助的で、変化が出るまで月単位かかります

「レーザーは怖いのでまず塗り薬で」と考える人は多いのですが、塗り薬の実力は数字で知っておく必要があります。光老化によるシミ(liver spots)を対象にした二重盲検ランダム化比較試験では、0.1%トレチノインクリームを10か月毎日塗布した群で、顔の色素斑が薄くなった人は83%(プラセボ群は29%)でした4。有効性はあるものの、「10か月かけて薄くなる」のであって、レーザーのように短期間で除去できるわけではありません。なお、トレチノイン外用薬はシミ治療薬として国内で承認された製剤がなく、使用は医師の管理下での自由診療が前提です。

薬剤 老人性色素斑への位置づけ 補足
ハイドロキノン メラニン生成を抑える外用薬。単独での除去力は限定的で、レーザー後の色素沈着対策や併用で使われることが多い 刺激性があり、濃度・期間は医師の指示で。自己流の長期連用は避ける
トレチノイン ターンオーバーを速めてメラニンの排出を促す。10か月の塗布で83%が「薄くなった」との試験データ4 赤み・皮むけが出やすい。国内ではシミ治療薬として未承認
トラネキサム酸 主な対象は肝斑。メタ解析で肝斑への有効性が報告されている1。老人性色素斑を消す薬ではない 肝斑合併例で内服が検討される
シナール(ビタミンC配合錠) メラニン生成に関わる酸化反応を抑える補助。単独で老人性色素斑を除去するデータはない レーザーや外用との併用で処方されることがある
個人輸入の高濃度ハイドロキノンは避けてください:海外通販では高濃度のハイドロキノンやトレチノインが入手できてしまいますが、濃度が高いほど刺激性皮膚炎のリスクが上がり、炎症が起きればその痕がまた色素沈着になるという悪循環に陥ります。品質管理や偽造品の問題もあり、健康被害が起きても国の救済制度の対象外です。外用薬は必ず医師の診察を経て使ってください。

市販の美白化粧品にできた老人性色素斑を消す効能はなく、役割は「予防」です

ドラッグストアの美白化粧品(医薬部外品)に国が認めている効能は、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」までです5。つまり制度上、市販の美白化粧品は「これからできるシミを防ぐ」ものであり、「できてしまった老人性色素斑を消す」効能は承認されていません5。「シミが消える」かのような広告表現の商品があっても、承認された効能の範囲を超えた宣伝だと考えてください。

一方で、予防という本来の役割では市販品にも意味があります。老人性色素斑の原因は紫外線の蓄積なので、新しいシミを増やさない・今あるシミを濃くしないためには通年の紫外線対策が基本です。環境省の紫外線環境保健マニュアルでも、日焼け止めの適切な使用、帽子や日傘、日陰の利用といった対策の組み合わせが推奨されています7。レーザーで除去した後の再発予防としても、紫外線対策は治療とセットで続ける必要があります。

シミ・肝斑の治療薬は医師の診察を受けてから
トラネキサム酸錠 250mg 90錠

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肝斑の改善による美白効果ほか、炎症による痛みや腫れを抑える内服薬。

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シナール配合錠 90錠

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シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、コラーゲン生成を助けるビタミン剤。

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グルタチオン錠 100mg 90錠

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抗酸化作用で肌の酸化(くすみ)を予防する美白サポート成分。

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老人性色素斑のよくある質問では「自然には消えない」「保険は原則きかない」が答えになります

老人性色素斑は放っておけば自然に消えますか?

期待できません。老人性色素斑は表皮の細胞が老化によってメラニンを溜め込み続ける変化が定着したものなので1、日焼けのように時間経過で戻ることは基本的にありません。むしろ加齢と紫外線でゆっくり濃く・大きくなる傾向があり、盛り上がって脂漏性角化症に移行することもあります1

レーザーは1回で終わりますか?

濃くはっきりした斑は1回の照射で大きく反応することが多い一方1、薄い斑は反応が弱く複数回や併用治療が必要になることがあります1。また照射後におおむね1〜3割の確率で炎症後色素沈着が起こり23、それが落ち着くまで数か月かかるため、「完全にきれいになるまで」は数か月単位で考えておくのが現実的です。

治療に健康保険は使えますか?

老人性色素斑の除去は整容目的とされるため、原則として保険適用外の自由診療です。ただし太田母斑など保険収載されている色素性疾患もあるため1、自己判断せずまず診断を受けることをおすすめします。

男性にもできますか?

できます。原因は紫外線の蓄積なので性別を問わず、屋外活動が多い人ほどリスクが高くなります。男性は日焼け止めの使用習慣がない人が多いぶん、手の甲やこめかみに多発しているケースが目立ちます。

レーザーで取ったシミは再発しますか?

除去した斑と同じ場所に色が戻ることや、周囲に新しい斑ができることはあります。土台にある「紫外線を浴びてきた肌」自体は変わらないためです。治療後も日焼け止めを中心とした紫外線対策を続けることが、再発と新生の両方を抑える基本になります7

参考文献

1 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」 リンク
2 Negishi K, et al. Comparative study of treatment efficacy and the incidence of post-inflammatory hyperpigmentation with different degrees of irradiation using two different quality-switched lasers for removing solar lentigines on Asian skin. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2013(PubMed) リンク
3 Postinflammatory hyperpigmentation associated with treatment of solar lentigines using a Q-Switched 532-nm Nd:YAG laser: a multicenter survey.(PubMed) リンク
4 Rafal ES, et al. Topical tretinoin (retinoic acid) treatment for liver spots associated with photodamage. N Engl J Med. 1992(PubMed) リンク
5 厚生労働省「医薬部外品の効能効果の範囲(試験問題の作成に関する手引き 別表)」 リンク
6 Davis EC, Callender VD. Postinflammatory hyperpigmentation: a review of the epidemiology, clinical features, and treatment options in skin of color. J Clin Aesthet Dermatol. 2010(PMC) リンク
7 環境省「紫外線環境保健マニュアル」 リンク

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