シミのレーザーと飲み薬はどっちか、シミの種類で決まる。老人性色素斑はレーザー、肝斑は飲み薬と塗り薬が基本
「シミにレーザーと飲み薬のどっちがいいか」は、シミの種類で答えが変わります。くっきり境界のある茶色いシミ(老人性色素斑・そばかす)はレーザーや光治療が第一選択で、両頬にもやっと左右対称に広がる肝斑は、まず飲み薬(トラネキサム酸)と塗り薬・遮光から始めます。肝斑に高出力のレーザーを当てると、かえって濃くなることが知られているためです1。つまり「自分のシミがどれか」を見分けることが、治療選びの出発点になります。この記事では、シミの種類別の使い分け、効果が出るまでの期間・回数・費用感・ダウンタイム、そして肝斑にレーザーが向かない理由を、診療指針と添付文書の数値に沿って整理します。
くっきりした茶色いシミはレーザー、もやっとした左右対称の肝斑は飲み薬と塗り薬が基本
シミは見た目が似ていても種類が異なり、種類ごとに向く治療が違います。まず自分のシミがどのタイプかを確認してください。自己判断は難しいため、最終的な診断は医療機関で受けることが前提です。
| シミの種類 | 見た目の特徴 | 基本となる治療 |
|---|---|---|
老人性色素斑 |
境界がはっきりした円形〜楕円の茶色い斑。頬骨やこめかみに多い | レーザー・光治療(IPL)が第一選択1 |
そばかす(雀卵斑) |
鼻〜頬に散らばる小さな点状の斑。子どもの頃から出ることが多い | レーザー・光治療(IPL)が向く1 |
肝斑 |
両頬・額・口まわりに左右対称、もやっと広がる。境界が不明瞭 | 遮光・飲み薬・塗り薬がまず基本。レーザーは慎重に1 |
炎症後色素沈着 |
ニキビや傷のあとに残る茶色い跡。元の炎症の形に沿う | 遮光・塗り薬で時間をかけて。多くは自然に薄くなる |
ポイントは、老人性色素斑とそばかすはレーザーが得意、肝斑はレーザーが不得意という非対称があることです。さらに肝斑は他のシミと混在していることも多く、その場合は肝斑を飲み薬・塗り薬で落ち着かせてから、残ったシミにレーザーを検討する順番になります。
老人性色素斑やそばかすは、メラニンを狙うレーザーで1回でも変化が出やすい
くっきりした茶色いシミにレーザーが向くのは、シミの色素(メラニン)だけを狙って熱で壊す仕組みだからです。Qスイッチレーザーは光を非常に短い時間(ナノ秒単位)で当て、色素のかたまり(メラノソーム)を選んで壊し、周囲の組織への熱を最小限に抑えます1。色のコントラストがはっきりしたシミほど、この仕組みが効きやすくなります。
- 効果の目安:低出力のQスイッチNd:YAGレーザー(1〜2J/cm²)を6〜10回くり返した症例集積では、12人中7人(58.3%)が著明な改善またはほぼ完全に改善、3人(25.0%)が中等度の改善を示したと報告されています1。
- 1回照射でも:532nmのQスイッチレーザーを老人性色素斑37例に1回照射した試験では、高めの出力で治療した病変の60%で75%を超える色素の除去が得られました1。
- 変化が見える時期:照射後はかさぶたになり、1〜2週間で自然にはがれます。はがれた直後は赤みやピンク色が残り、肌の色が落ち着くまでさらに数週間かかります。
診療指針でも、老人性色素斑へのレーザー・光治療は「治療を希望する患者には強く推奨する」と位置づけられています1。一方で、これは「悪性のシミ(悪性黒子など)でないこと」を医師が見分けたうえでの話です。自己判断でレーザーだけ受けると、見逃しのリスクがあります。
肝斑にレーザー単独はかえって濃くする恐れがあり、まず飲み薬と塗り薬から始める
肝斑だけは、レーザーを「最初の手段」にしません。理由は、肝斑のメラニンを作る細胞が刺激に過敏で、強い熱を加えると炎症が起きてかえって色が濃くなることが知られているためです。診療指針も、日光黒子に広く使われる高出力のQスイッチルビーレーザーやアレキサンドライトレーザーを肝斑に当てると「強い炎症が惹起されて肝斑が悪化する」と明記しています1。
では低出力でくり返す「レーザートーニング」ならどうかというと、これも万能ではありません。やや高めの出力(3.0〜3.8J/cm²)で週1回5回くり返したところ、22例中3例に小さな白抜け(脱色素斑)が生じた報告が紹介され、注意が促されています1。白抜けは元に戻りにくいため、安易な反復照射はリスクになります。
診療指針における肝斑へのレーザー・IPLの位置づけは「条件によっては行うことを弱く提案する」(推奨度2)にとどまり、遮光・外用や内服などの保存的治療を行っても十分な変化が得られない場合の併用療法として扱われます1。レーザー単独療法は治療後に再燃しやすく、外用療法より優れているとは結論できない、というのが複数のメタ解析の評価です1。順番としては、遮光・美白剤(ハイドロキノンなど)がゴールドスタンダードで、レーザーはそれでコントロールできなかったときに考慮する、という流れになります1。
肝斑の飲み薬トラネキサム酸は、3か月で肝斑スコアが約半分まで下がった報告がある
肝斑の内服でよく使われるのがトラネキサム酸です。もともと止血・抗炎症の薬で、肝斑では、メラニンを作る細胞を刺激する経路を抑えることで色素の生成にブレーキをかけると考えられています。
| 項目 | トラネキサム酸(内服) |
|---|---|
| 変化が出るまで | 数か月単位。3か月続けて評価するのが目安 |
| 臨床試験の結果 | 500mg/日を3か月で、肝斑スコア(mMASI)が49%低下。プラセボは18%低下3 |
| 向くシミ | 肝斑。広い範囲にまとめて働く |
| 向かないシミ | 老人性色素斑・そばかすには効きにくい |
中等症〜重症の肝斑を対象に、トラネキサム酸250mgを1日2回(計500mg/日)3か月内服した二重盲検試験では、肝斑スコア(mMASI)がトラネキサム酸群で49%、プラセボ群で18%低下しました3。広い範囲の肝斑にまとめて働くのが内服の利点ですが、変化を感じるまでに数か月かかり、やめると再燃することもあるため、医師の管理下で続けることが前提です。
添付文書上の用法は1日750〜2,000mgを3〜4回に分けて内服とされていますが2、これは止血や口内炎などの保険適用の用量で、シミ・肝斑そのものは添付文書の効能・効果に含まれていません2。つまり美容目的での処方は適応外の自由診療になります。塗り薬としては、トラネキサム酸のほか、ハイドロキノンやトレチノインなどの美白外用が併用されます。
トラネキサム酸の副作用は0.1〜1%未満とまれで、主に食欲不振や悪心などの消化器症状
トラネキサム酸の内服で報告されている副作用は、頻度としては高くありません。添付文書では次のように記載されています2。
| 分類 | 症状 | 頻度 |
|---|---|---|
| 消化器 | 食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、胸やけ | 0.1〜1%未満2 |
| 過敏症 | そう痒感、発疹など | 0.1〜1%未満2 |
| その他 | 眠気 | 0.1%未満2 |
| 重大な副作用 | 痙攣(人工透析中の患者で発現することがある) | 頻度不明2 |
消化器症状や過敏症は飲み始めに出やすく、続けるうちに治まることが多いものの、症状が強いときは服用を中止して受診してください。臨床試験でも、肝斑へのトラネキサム酸内服で重篤な有害事象は報告されませんでした3。
レーザーと飲み薬・塗り薬は「どちらか一方」ではなく、シミの種類で組み合わせる
3つの治療は対立する選択肢ではなく、シミの種類に応じて役割が分かれます。下の表で、効果が出る速さ・回数・ダウンタイム・向くシミを並べます。費用は自由診療で全額自己負担となり、医療機関により大きく異なるため、あくまで目安です。
| 比較項目 | レーザー・光治療 | 飲み薬(トラネキサム酸) | 塗り薬(美白外用) |
|---|---|---|---|
| 得意なシミ | 老人性色素斑・そばかす1 | 肝斑3 | 肝斑・炎症後色素沈着の補助 |
| 変化が出る速さ | 1回でも変化が出やすい1 | 数か月単位3 | 数か月以上 |
| 回数・続け方 | 病変により1回〜複数回1 | 毎日内服を継続 | 毎日塗布を継続 |
| ダウンタイム | かさぶた・赤み(1〜2週間) | ほぼなし | 赤み・皮むけが出ることあり |
| 肝斑への適性 | 単独はNG。悪化・白抜けの恐れ1 | 第一に検討される3 | 併用の柱 |
| 費用の目安 | 1回ごとの自由診療 | 月単位で続けやすい | 月単位で続けやすい |
整理すると、くっきりした茶色いシミ=レーザー、もやっとした左右対称の肝斑=飲み薬と塗り薬が基本線です。両者が混在しているときは、肝斑を内服・外用で落ち着かせてから、残った老人性色素斑にレーザーを当てる、という順番が安全です。どのシミかの見分けが治療の成否を分けるため、まずは医療機関での診断を受けてください。
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シミ治療の薬を個人輸入や市販で済ませず、医療機関で使うべき理由
トラネキサム酸やハイドロキノンを個人輸入で安く入手しようとする人がいますが、これは避けてください。個人輸入品は成分量や品質が保証されず、健康被害が起きても公的な救済の対象外になります。トラネキサム酸は血栓リスクのある人やピル併用者では慎重な判断が必要で2、自己判断での服用は危険です。市販の美白化粧品は医薬品より成分濃度が低く、肝斑や濃いシミには力不足のことがあります。シミの種類の診断、薬の選択と量の調整、レーザーとの組み合わせまで含めて、医療機関で相談するのが確実です。
レーザーと飲み薬は同時に進めてもいいですか。
シミの種類が混在している場合、肝斑を飲み薬・塗り薬で抑えながら、落ち着いた段階で老人性色素斑にレーザーを併用する、という進め方が診療指針の考え方に沿います1。順番と適応は医師が判断します。
肝斑にレーザートーニングをすすめられました。受けても大丈夫ですか。
低出力レーザーは肝斑に使われることがありますが、出力や回数によっては白抜け(脱色素斑)が生じた報告があり、診療指針も注意を促しています1。まず遮光・内服・外用を行っても十分な変化が得られない場合の併用療法という位置づけです。リスクの説明を受けたうえで判断してください。
トラネキサム酸はどれくらいで効きますか。
肝斑の臨床試験では3か月の内服で肝斑スコアが49%低下しました3。変化を感じるには数か月かかり、やめると再燃することもあるため、医師の管理下で続けることが前提です。
そばかすは飲み薬で消えますか。
そばかす(雀卵斑)や老人性色素斑には、トラネキサム酸の内服は効きにくいシミです。これらはレーザーや光治療(IPL)が向きます1。
参考文献
1 公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本形成外科学会ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」第1節 シミ(日光黒子・肝斑)に対するレーザー治療 リンク
2 医薬品医療機器総合機構(PMDA)トランサミン錠 添付文書(効能・効果、用法・用量、副作用) リンク
3 Del Rosario E, et al. Randomized, placebo-controlled, double-blind study of oral tranexamic acid in the treatment of moderate-to-severe melasma. J Am Acad Dermatol. 2018. リンク
老人性色素斑
そばかす(雀卵斑)
肝斑
炎症後色素沈着