シミ

シミの種類は主に4つで、肝斑だけはレーザーで悪化しうるため見分けが先決です

内海

顔にできるシミの大半は「老人性色素斑」「肝斑」「そばかす(雀卵斑)」「炎症後色素沈着」の4種類のどれかで、種類ごとに合う治療がまったく違います。特に注意が必要なのは肝斑です。老人性色素斑にはレーザー・光治療が「強く推奨」されている一方で、肝斑に高出力のQスイッチレーザーを照射すると、強い炎症が起きてかえって濃くなることが知られています1。つまり、シミ治療は「どの治療を受けるか」より先に「自分のシミがどの種類か」を当てることが重要です。この記事では、肌写真つきの識別表で4種類の見分け方を示し、そのうえで種類別に効く治療と薬を整理します。

顔のシミの大半は老人性色素斑・肝斑・そばかす・炎症後色素沈着の4種類に分けられます

美容医療で「シミ」と呼ばれるものは単一の病名ではなく、日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、雀卵斑、炎症後色素沈着、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)などの色素異常の総称です1。まずは次の識別表で、自分のシミがどれに近いかを確認してください。

シミの種類 見た目の特徴 できやすい場所 出はじめる時期 主な原因
老人性色素斑 輪郭がはっきりした茶色〜濃茶色の円形・楕円形の斑。大きさは数mm〜数cmまでさまざま 頬・こめかみなど日光が当たる部位、手の甲 30代以降に増え、加齢とともに数が増える 長年の紫外線の蓄積(光老化)
肝斑 輪郭がぼんやりした薄茶色の色むらが、左右対称にもやっと広がる 頬骨のあたりに左右対称。額や口まわりにも 20代後半〜40代4。妊娠やピル服用を機に出ることも 紫外線と女性ホルモン1。摩擦も悪化要因とされる
そばかす(雀卵斑) 直径数mm以下の細かい茶色の点が多数散らばる 鼻を中心に両頬へ広がる 幼少期〜思春期に目立ちはじめる 遺伝的要因が強く、紫外線で濃くなる
炎症後色素沈着 ニキビ・傷・かぶれなどの跡に残る茶色〜灰褐色の色むら。炎症のあった場所と一致する 顔・体のどこでも(炎症が起きた部位) 年齢を問わない。炎症の数週間後から目立つ 炎症の刺激でメラニンが過剰に作られる

見分けるときの着眼点は次の3つです。

  • 左右対称か:頬骨の高さに左右対称で輪郭がぼんやりしていれば、肝斑の可能性をまず考えます。
  • 輪郭がはっきりしているか:境界がくっきりした単発〜数個の斑なら老人性色素斑が典型的です。
  • いつからあるか:子どもの頃からある細かい点はそばかす、ニキビや傷の後に残ったものは炎症後色素沈着です。
自己判定だけで治療を決めないでください:肝斑は、あざの一種である後天性真皮メラノサイトーシス(ADM・両側性遅発性太田母斑)との見分けが専門医でも難しいとされています1。ADMはレーザー治療が強く推奨される一方1、肝斑は高出力レーザーで悪化しうるため、両者の取り違えは結果に直結します。複数の種類のシミが同じ顔に混在していることも多く、最終的な診断は皮膚科・美容皮膚科の診察で受けてください。

老人性色素斑は紫外線の蓄積による境界のはっきりしたシミで、レーザー・光治療が強く推奨されています

老人性色素斑(日光黒子)は、長年浴びてきた紫外線によって表皮のメラニンが増えてできるシミで、一般に「シミ取りレーザー」の対象としてイメージされるのはこのタイプです。日本皮膚科学会・日本形成外科学会などがまとめた美容医療診療指針(令和3年度改訂版)では、日光黒子に対するレーザー・光治療(IPL)は推奨度1(治療を希望する患者には強く推奨する)とされています1

治療にはメラニンを標的とするQスイッチレーザー、ピコ秒レーザー、IPLなどが使われます1。照射後はかさぶた状になって剥がれ落ちる経過が一般的ですが、照射後に一時的な炎症後色素沈着(いわゆる「戻りシミ」)が出ることがあり、その場合は数か月かけて薄くなっていきます。照射後の遮光は必須です。

注意点として、輪郭が不整・色がまだら・急に大きくなったといった特徴がある場合は、悪性黒色腫など皮膚悪性腫瘍との鑑別が必要です。安易にレーザーを照射するとダーモスコピー像が変化し、悪性腫瘍の診断を困難にする危険があると指針にも明記されています1

肝斑は頬骨に左右対称に広がるシミで、治療の第一歩は遮光とトラネキサム酸内服です

肝斑は20代後半〜40代の女性に多く4、紫外線と女性ホルモンが主な悪化因子です1。よくなったり悪くなったりを繰り返す難治性の色素異常で、美容医療診療指針では「遮光に留意することが必須で、この指導が最も重要」とされています1。そのうえで、トラネキサム酸の内服や美白剤の外用といった保存的治療が基本になります1

トラネキサム酸内服のデータは比較的そろっています。肝斑患者561人を解析した報告では、89.7%に改善がみられ、内服開始から2か月以内に反応が出はじめ、治療期間の中央値は4か月でした。一方で中止後の再発率は27.2%、何らかの副作用(腹部の張りや胃腸症状など)は7.1%に報告されています2。また、トラネキサム酸250mgを1日2回・12週間内服したランダム化比較試験では、肝斑の重症度スコア(MASI)が平均58.86%低下しました3

肝斑に高出力レーザーは禁物です:老人性色素斑の治療に広く使われる高フルエンス(高出力)のQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーは、強い炎症を起こして肝斑を悪化させることが知られています1。指針上も、肝斑へのレーザー・IPLは推奨度2(条件によっては行うことを弱く提案する)にとどまり、遮光・内服・外用で十分な結果が得られない場合の併用という位置づけです1。「シミ取り放題」のようなプランで肝斑に照射されると逆効果になりえます。
トラネキサム酸を飲んではいけない人がいます:トラネキサム酸は血を固まりやすくする方向に働く薬のため、血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症など)の既往がある人や、低用量ピルを服用中の人は、内服前に必ず医師に伝えてください。市販のトラネキサム酸配合薬にも服用期間の上限が定められており、自己判断での長期連用は避けるべきです。

そばかす(雀卵斑)は遺伝の影響が強い細かい斑点で、レーザーや光治療の対象になります

そばかす(雀卵斑)は、鼻から両頬にかけて直径数mm以下の細かい茶色の点が散らばるシミで、幼少期から思春期にかけて目立ちはじめます。遺伝的な要因が強く、紫外線を浴びる夏に濃くなり、冬にやや薄くなる傾向があります。

そばかすは表皮のメラニンが増えるタイプの色素斑なので、老人性色素斑と同様に、メラニンを標的とするQスイッチレーザーやIPLが治療に使われます1。ただし体質的にできやすい素地は変わらないため、治療後も紫外線対策を続けないと再発しやすい点は知っておく必要があります。数が多く広範囲に散らばっている場合は、1個ずつ狙うレーザーよりも顔全体に照射できるIPLが選ばれることもあります。

炎症後色素沈着はニキビや傷の後に残るシミで、自然に薄くなるまで数か月から数年かかります

炎症後色素沈着は、ニキビ・虫刺され・やけど・かぶれ・摩擦などの炎症が治ったあとに残る茶色い色むらです。皮膚の浅い層(表皮)にメラニンが残るタイプは、治療しなくても数か月から数年かけて薄くなっていくと報告されています。一方、メラニンが深い層(真皮)に落ちたタイプは青灰色に見え、消えるまでさらに長くかかるか、残り続けることもあります5

対処の基本は「これ以上の刺激を与えないこと」です。具体的には次の3点です。

  • 原因の炎症を止める:ニキビが繰り返しできている限り、色素沈着は次々と作られます。まずニキビ治療を優先します。
  • こすらない:洗顔・クレンジング・マッサージの摩擦は色素沈着を長引かせます。スクラブやピーリングのやりすぎも逆効果です。
  • 遮光する:紫外線はメラニンの排出を遅らせます。日焼け止めを毎日使います。

早く薄くしたい場合は、ハイドロキノンなどの外用やケミカルピーリングが選択肢になります5。レーザーは、照射の刺激そのものが新たな色素沈着を生む可能性があるため、慎重に判断されます。

シミの種類ごとに合う治療は異なり、自己判断の治療選びは肝斑悪化の原因になります

ここまでの内容を、種類別の治療相性として一覧にまとめます。◎は第一選択になりやすいもの、△は条件付き・補助的なもの、×は避けるべきものです。

シミの種類 レーザー・光治療(IPL) トラネキサム酸内服 ハイドロキノンなどの外用
老人性色素斑 ◎ 強く推奨(推奨度1)1 △ 直接の標的ではない △ 補助的に併用
肝斑 × 高出力は悪化リスク。低出力でも保存的治療が先(推奨度2)1 ◎ 第一選択級。89.7%改善の報告2 ○ 美白外用を併用1
そばかす(雀卵斑) ○ Qスイッチレーザー・IPLの対象1 △ 主役にはならない △ 補助的
炎症後色素沈着 △ 刺激で悪化することがあり慎重に △ 補助的 ○ 外用・ピーリングが中心5

シミ治療で処方されることの多い飲み薬・塗り薬は次のとおりです。いずれも医師の診察のうえで、自分のシミの種類に合わせて使うものです。

分類 主な使われ方 注意点
トラネキサム酸 内服薬 肝斑の中心的な内服。メラニンを作る刺激(プラスミン)を抑える 血栓症の既往がある人・ピル服用中の人は要相談。胃腸症状などの副作用報告は7.1%2
シナール(ビタミンC配合) 内服薬 メラニン生成の抑制を狙って各種シミに補助的に併用 単独で既存のシミを消す力は限定的
ハイチオール(L-システイン) 内服薬 ビタミンCと組み合わせて補助的に使われる 単独での変化はゆるやか
ハイドロキノン 外用薬 肝斑・炎症後色素沈着などの美白外用。メラニン生成酵素の働きを抑える 赤み・かぶれが出ることがある。使用中は遮光必須。自己判断の高濃度使用は避ける

費用面では、美容目的のシミ治療(レーザー、IPL、トラネキサム酸の肝斑目的の処方、ハイドロキノン外用など)は基本的に自由診療で全額自己負担となり、料金は医療機関ごとに異なります。一方、シミに見えて実は治療が必要な皮膚疾患だった場合の診察・検査は保険診療の範囲です。「自分のシミがどれか分からない」段階なら、まず皮膚科で診断を受けるのが結局いちばん無駄がありません。

ハイドロキノンや美白薬の個人輸入は避けてください:海外通販・個人輸入で入手した医薬品は、品質や有効成分の含有量が確認できず、偽造品の混入や健康被害のリスクがあると厚生労働省が注意喚起しています6。高濃度ハイドロキノンやトレチノインは刺激が強く、誤った使い方はかえって炎症後色素沈着を作ります。必ず医師の処方で使ってください。
シミ・肝斑の治療薬は医師の診察を受けてから
トラネキサム酸錠 250mg 90錠

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肝斑の改善による美白効果ほか、炎症による痛みや腫れを抑える内服薬。

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シナール配合錠 90錠

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シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、コラーゲン生成を助けるビタミン剤。

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グルタチオン錠 100mg 90錠

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シミの種類についてよくある質問には次のように答えられます

肝斑かどうかを自分で見分ける目安はありますか?

「頬骨のあたりに左右対称」「輪郭がぼんやりして地図状に広がる」「20代後半以降に出てきた」「妊娠やピルをきっかけに濃くなった」が揃えば肝斑の可能性が高くなります。ただし老人性色素斑やADM(あざの一種)と混在・類似することが多く、最終判断は皮膚科の診察が必要です1

市販の飲み薬だけでシミは消えますか?

種類によります。肝斑であればトラネキサム酸配合の市販薬で薄くなる可能性はありますが、市販薬には服用期間の上限があり、血栓リスクの確認も自己責任になります。老人性色素斑やそばかすは飲み薬だけで消えることは期待しにくく、レーザー・光治療が中心です1

シミ取りレーザーは1回で終わりますか?

シミの種類・大きさ・深さと使う機器によります。老人性色素斑は少ない回数で反応が出やすい一方、照射後に一時的な戻りシミ(炎症後色素沈着)が出て、薄くなるまで数か月待つ経過もあります。そばかすやADMは複数回の照射が前提になることが多いです1

急に大きくなったシミ・色がまだらなシミも同じように治療していいですか?

いけません。急な拡大・不整な形・色むら・出血などがあるものは、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍を除外する必要があります。診断がつく前にレーザーを当てると、ダーモスコピーでの診断が難しくなる危険が指摘されています1。まず皮膚科で診断を受けてください。

参考文献

1 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」 リンク
2 Lee HC, et al. Oral tranexamic acid (TA) in the treatment of melasma: A retrospective analysis. J Am Acad Dermatol. 2016 リンク
3 Heydari M, et al. Randomized Clinical Trial on the Efficacy of Oral Tranexamic Acid Versus Topical Tranexamic Acid in Treatment of Melasma. J Cosmet Dermatol. 2025 リンク
4 Basit H, et al. Melasma. StatPearls, NCBI Bookshelf リンク
5 Davis EC, Callender VD. Postinflammatory hyperpigmentation: a review. J Clin Aesthet Dermatol. 2010 リンク
6 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」 リンク

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